東日本大震災を題材にした台湾映画『父の子守歌』が3月11日、第7回大阪アジアン映画祭で世界初上映
東日本大震災を題材にした台湾映画『父の子守歌』が3月11日、第7回大阪アジアン映画祭で世界初上映された。「特別な日に上映されるこの映画を日本の皆さんと見届けたい」と、主演俳優・蔭山征彦、チャン・シーハオ監督らスタッフ・キャストが自費で来日した。
同作品は震災から3日間の、台北の病院が舞台。日台ハーフの医学生(蔭山)は、宮城で教師をしている姉と連絡がつかなくなる。その一方、病院でも生死に関わる事件が発生。チャン監督が新聞で見つけた8つの実話を散りばめた群像劇だ。
チャン監督の実妹は日本人と結婚し、現在米国で暮らしているが、その妹の実体験に背中を押されて映画製作に挑んだという。「3.11後、妹は米国に来た8歳の震災孤児に会いに行っています。彼は家族と車で逃げる途中に津波に巻き込まれて、一人だけ生き残った。以降、言葉を発しなくなってしまったそうです。そこで日本語が話せる妹が彼のもとへ通い、最近ようやく会話をするようになった。その話を聞いて、彼らが未来に希望を抱けるような映画を作りたいと思ったんです」と思いの丈を語った。
主演の蔭山は、大ヒットした台湾映画『海角七号』のナレーションを務めた日本人俳優。蔭山が大学4年生だった1999年に台湾大地震が発生し、真っ先に現地入りした日本の救援隊に、通訳のボランティアとして同行したことが今に繋がっているという。蔭山は「海外に長く住んでいるからこそ思う母国への愛がある。仕事と通じて、日台の絆に少しでも役立てれば」。また物語のカギを握る人物を演じている西田恵里奈は、台湾で大人気の歌手だ。西田も「東日本大震災の時、台湾からは多額の義援金(世界トップクラスの200億円)を頂いた。感謝の気持ちを映画を通して伝えられたら」と本作に挑んだ思いを語った。
満席となった会場からは「震災から1年しか経ってないのに、映画を作ってくれたことに感謝したい」という声が相次いだ。最後にチャン監督ら出演者は、観客全員と記念写真を撮るなどして友好を温めていた。(取材・文:中山治美)
映画『父への子守歌』は台湾で初夏公開予定