石井克人監督、1日20時間労働で完成した『スマグラー』に満足!前代未聞の悪役へのこだわり
映画『鮫肌男と桃尻女』(1999年公開)でセンセーションを巻き起こした日本映画界きっての鬼才・石井克人監督が、妻夫木聡主演の最新作『スマグラー おまえの未来を運べ』のソフト化にあたり、作品の舞台裏を明かした。本作の撮影期間は30日間で、1日の平均労働時間は何と20時間、アシスタントに至っては21時間だったという。
『スマグラー おまえの未来を運べ』は、漫画家・真鍋昌平のコミック「スマグラー」を基に、役者の夢をあきらめかけたフリーターの主人公・砧が裏社会での経験や仲間との交流から成長していく姿を描いた物語。主演の妻夫木のほか、永瀬正敏や松雪泰子、満島ひかり、安藤政信、我修院達也、テイ龍進、高嶋政宏(正式表記はハシゴ高)ら豪華キャストを有し、エンターテインメント性たっぷりのアクションも満載な意欲作だ。
肉体的苦労も経て完成した本作に「えぐみが出せたというか、今まであまり見たことのない悪役をつくれたのではないかと。最初にやろうとしていたことがいくつか壁を越えて実現したので、満足しています」と充実感をにじませた石井監督。殺し屋の背骨(安藤)と内臓(テイ)のキャラクターに惹(ひ)かれたことが映画化の決め手だったと明かし「怪物みたいな二人がいるからモチベーションになった」と自らも楽しんで制作にあたった様子。
驚異的な身体能力を持つキャラクターたちから繰り出されるアクションは見応え十分だが、「お客さんが満足してくれるようなアクションシーンを邦画でもできないかなとずっと思っていた」。念願かなって、一度観たら忘れられないスタイリッシュな描写を生み出した。「追求し過ぎなかったら現場ももっと楽だったんですけどね」と笑顔で語るも、石井監督ならではのこだわりが詰まったアクションシーンであることに違いはない。
石井監督が手掛けてきた『鮫肌男と桃尻女』『茶の味』『山のあなた 徳市の恋』などにはいくつか共通点があり、それは本作にも通じる。「山」や「そば屋」、「ヒロインが美女」であるということだ。山やそば屋は「何となく好きなんですよね。山は人が少ないので撮影がしやすく、そば屋は店内の配置がだいだい決まっているから画(え)コンテが描きやすい」と思いがけない秘話が飛び出す。
また、本作のヒロイン・満島を「ああいうちょっとポップな顔つきで、かつ芝居がうまい人というのはなかなかいないと思います」と称賛。主役級の俳優が個性豊かにスクリーンを彩ることも特徴的な石井監督作品のキャスティングは「結構時間のない撮影が多いので、人柄ですね。言うことを聞いてくれる人(笑)」だとポイントを明かした。「僕は多分アクションシーンばっかり観ると思います」と本ブルーレイ&DVDのおすすめの見方を伝授した石井監督。過去作を想起しながら観るのも一興だ。(編集部・小松芙未)
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