映画『ハンガー・ゲーム』を超える批評家の評価が高いアクション映画『ザ・レイド・レデンプション』とは?
大ヒットを繰り広げるアクション映画『ハンガー・ゲーム』よりも、アメリカの批評家の間で絶賛されているインドネシアのアクション作品『ザ・レイド・レデンプション(英題) / The Raid Redemption』について、ギャレス・エヴァンス監督が語った。
同作は、スワット特殊部隊に属するラマ(イコ・ウェイス)は、ギャング組織がアジトにしている荒廃したビルを制圧するために、仲間20人とともにビルに送り込まれ、凶悪な組織のメンバーと生死をかけた壮絶な戦いを繰り広げていくという話題の作品。
まずギャレス監督は、長編映画を撮影する前に『サムライ・モノガタリ(原題) / Samurai Monogatari』という短編作品を日本語で撮影したそうだ。「ある学校で脚本コースを学んでいて、そのコースでは長編の脚本を仕上げなければならなかったが、書いていた内容が個人的だったことと、自分の環境が変わったために、脚本を仕上げることができなかったことがあったんだ。それで自信を失いかけた僕は、短編ならできるかもしれないと思ったんだ。そこで、侍を題材にした脚本を書いて、当時僕の友人だった女性がインドネシアと日本人のハーフで、日本語を話せる彼女に僕の脚本を訳してもらって、彼女が通う学校の日本人生徒5人を説得して、僕の映画に出演してもらったんだ」と最初に映画を製作するきっかけを話した。ちなみに、そのときの友人の女性が、現在ギャレスの奥さんであるらしい。
そんなインドネシアの血をひく奥さんとともに、インドネシアでシラット(東南アジアで盛んな武術)のドキュメンタリー作品を撮影していた際に、この映画の主人公イコ・ウェイスと出会ったそうだ。「そうなんだ。ジャカルタのシラットの師範が教えていた生徒の中に、あのイコ・ウェイスがいたんだ。彼のパフォーマンスを一度見ただけで、映画スターになる可能性があると思ったよ。それから、プロダクション・マネジャーとして参加していた妻に、イコを説得してもらって、映画に出演するための交渉をしてもらったんだよ」と明かした。ちなみにイコ・ウェイスは、ギャレス監督の前作『メランタウ(原題) / Merantau』にも出演している。
この映画のコンセプトについて「まず予算は約100万ドル(8,000万円)だったから、スワットチームが一か所のビルで戦いを繰り広げるアイデアは良いと思ったんだ。その次に、このスワットの襲撃は10時間で終わるという設定にして、次の日の朝まで続くようなダラダラしたものにはしたくなかった。だから撮影もリアルタイムで行い、さらにビルのどの部屋からも敵(組織)が襲ってくるようにして、速いペースで危険が襲ってくるようにして、まさにサバイバル・ホラーのコンセプトを作り上げたんだ」と語った。そんなコンセプトの中でも、悪役のキャラクターのインスピレーションは、北野武監督や三池崇史監督作品から影響を受けたものだそうだ。
これだけ派手なアクションの連続だと、一歩間違えれば死の危険も考えられるが、実際に危なかったシーンはあったのか、との問いに「主役イコが、敵の一味の喉をナイフで刺すというシーンあるが、あれはカメラを横の角度に設定して撮り、実際に刺してなくても、喉の横を突きさして、刺したように見せるシーンを撮る予定だったが、イコが誤って敵の一味の頬を刺してしまったんだ……。幸いにも、ナイフの刃を木製で作っていたために、深い傷を負うことはなかったが、あれが何インチかズレて、目に刺さっていたら、僕らの撮影はきっとあのときに終わっていたはずだよ……。だから、大事に至らなくてよかったと思っている」と明かした。
映画は、近年観たアクション映画の中でもトップレベルで、さらにマイク・シノダやリンキン・パークが手掛けた音楽が、緊張感みなぎる戦闘シーンに抑揚をつけている素晴らしい作品に仕上がっている。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)