『かもめ食堂』荻上直子監督、「脚本を書かないと監督なんて恥ずかしくて無理っす」
第62回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に出品された映画『レンタネコ』でメガホンを取った荻上直子監督が、「脚本を書かないと監督なんて恥ずかしくて無理っす」と自身の映画作りを語った。
『かもめ食堂』『めがね』で独自の世界観を確立し、続く『トイレット』ではかわいくてどこかヘンテコな人間ドラマを描いた荻上直子監督。新作『レンタネコ』は、寂しい人たちにそっと猫を貸し出す“レンタルネコ屋”を営む風変わりな女の子サヨコが主人公の物語だ。
「以前はわたし自身、猫なんて絶対に飼えないと思っていました。でもたまたま友達に預けられてから手放せなくなって。以来飼い続けています。現在は滋賀県から来た“びわこちゃん”など3匹。一緒にいてこれほどかわいくてしょうがないものが、寂しい寂しいと思いながら一人でいる人のそばにいれば気持ちも和らぐのにと思って」。
どこか浮世離れしたサヨコを演じるのは、『めがね』でも荻上監督と組んだ市川実日子。市川のコミカルでキュートな存在感がサヨコにピタリとハマったのは「完全なアテ書きだった」からだという。「そもそも実日子ちゃんと何かやりたいという思いが大きかったんです。以前の彼女には“演じる自分がちょっと恥ずかしい”みたいな感覚があったように見えたけど、最近はそれが抜けて大人の女優さんになっているように思う。もちろんそれは魅力的だけれど、少年っぽさの残るような市川さんを撮っておきたくて」。
荻上監督にとって、脚本も手掛けるのはかなり重要なこと。「自分で脚本を書かないと監督なんて恥ずかしくて無理っす! って感じ(笑)。特に年上の役者さん、自分が作品を観てきた方と一緒に仕事をするのは恐れ多くて。脚本を自分が描いているから何とかできるという感じです」。
原作ありきの依頼もあるけれど、できれば自身で脚本を書くということにこだわっていきたい。「映画って、思い通りにいかないのがいいんです、自分の想像を超えるのが。才能のあるスタッフやキャストが集まり、彼らの能力が集まって一つの作品になるのが面白い。“映画作りは魔薬みたいなもの”と誰かが言っていたけど、一度やると抜けられない魅力がありますね」。(取材・文:浅見祥子)
映画『レンタネコ』は5月12日より銀座テアトルシネマ、テアトル新宿ほかにて全国公開