ドイツ国営放送が「フクシマのウソ」を告発 「原子力ムラ」の恐るべき実態を暴いたドキュメンタリーが話題に
動画サイトYouTubeなどにアップされている、ドイツの国営放送ZDFが製作したドキュメンタリー番組「フクシマのウソ(原題:Die Fukushima Luge)」の衝撃的な内容が、ネット上で話題を呼んでいる。
今年3月8日にドイツで放映された本作は、監督を務めるZDF特派員であるヨハネス・ハーノ記者が、外国人と見破られないよう防護服を着込み、福島の立ち入り禁止区域に潜入取材する衝撃的なシーンから始まる。
クルーたちを先導するのは、長年にわたり福島第一原発と第二原発で働いていた原子力分野におけるエンジニア会社の社長だ。同社長は、原発の安全性における重大な欠陥を指摘してきた自身の訴えを東電、政府、大学の学者たちで構成された「原子力ムラ」に無視され続けてきたことを告白。番組は、日本のメディアでは決して語られることのなかった「原子力ムラ」の恐るべき実態を次々に暴いていく。
インタビューには、日本で強大な影響力を持つグループ「原子力ムラ」に翻弄(ほんろう)された人物の一人として、元首相の菅直人氏も登場。震災後、東電から内密に職員を福島第一から撤退させていいかを打診されていたという衝撃的な事実を告白し、「原発を推進すれば、多額の献金が入り込む。それは文化に関しても同じで、スポーツやマスコミも含みます」と、日本全体にはびこる「原子力ムラ」による圧力の実態についても赤裸々に語っている。
日本のタブーに深く切り込んだハーノ記者は、番組の最後で「1,000以上もの使用済み核燃料が入った燃料プールがある、半壊状態の4号機が臨界を起こした場合、日本にとって致命的なものとなるだろう」と福島第一原発4号機の危険性を指摘。前出のエンジニア会社社長は4号機燃料プールの上の階に、新しい燃料棒が保管され、「重すぎる」機械が置いてあることを指摘した上で、「もう一度大地震が来れば建物は崩壊してしまうはず。そうなれば、また新たな臨界が起こるでしょう」と深刻な表情を浮かべる。
本作をパリのプロデューサーに教えられて知ったという、映画『friends after 3.11【劇場版】』を監督した岩井俊二は、「4号機の危険性を指摘するくだりで、地震学者が今後の大地震の発生する確率を語るに至っては、恐怖の一言でした。にもかかわらず、政府はいまだに再稼働と言っている。脱原発というより、脱日本。でも、そう簡単にはできないのが現実。自分たちは恐怖を日常として生きていくしかないのか、そう感じてしまいました」とコメントした。
4号機は、今月12日に冷却装置がストップするというアクシデントが起きたばかりだ。ネット上では、動画を観た人々が、「日本人はぜったいに観るべき」などというコメントと共に、ブログやツイッターを通してこのドキュメンタリーの内容を紹介しており、有志によって作られた日本語字幕バージョンがアップされている動画の再生回数は日を追うごとに増加し続けている。(編集部:森田真帆)