『アーティスト』の監督も魅了したビリー・ワイルダーとその作品で輝いた美女たちを振り返る
今年のアカデミー賞授賞式で、現在公開中の『アーティスト』のミシェル・アザナヴィシウス監督が「感謝をささげる」として名を挙げるなど、2002年に亡くなってから10年がたった今も古き良きハリウッドの象徴としてさんぜんと輝くビリー・ワイルダー監督の魅力を、作品に出演した女優たちと共に振り返った。
ビリー・ワイルダー監督といえば軽妙なコメディー作品で知られるが、シリアスなサスペンスや戦争映画など実に多彩な作品を世に送り出している。そしてワイルダーといえば盟友ジャック・レモンが出演する数々の作品が思い出されるが、女優たちだってビリー・ワイルダー作品によって一段と輝いたといっても過言ではない。その筆頭に挙げられるのがマリリン・モンローだ。『お熱いのがお好き』でモンローの演じた歌手の役どころは、楽団を変わるたびにサックス奏者と恋に落ちては痛い目に遭ってきたホレっぽい女の子。しかし、そんなイタいキャラクターも、モンロー×ワイルダーのコンビが見せれば下品なコメディーにはならない。またモンローが劇中でキュートな歌声やセクシーなダンスを披露し、彼女のコメディエンヌとしての才能を引き出すことにワイルダーは大成功している。
王道のシンデレラ・ストーリー『麗しのサブリナ』でのオードリー・ヘプバーンの可憐(かれん)さや、『アパートの鍵貸します』でのシャーリー・マクレーンのコケティッシュな笑顔には、ほおが緩む人も多かっただろう。まだ若手女優だったヘプバーンとマクレーンはワイルダー作品で魅力的に輝き、女優としての地位をより高めていったといえそうだ。
ほかにも『深夜の告白』で元祖ファム・ファタールの称号を与えられたバーバラ・スタンウィック、ハリウッドの裏側を描いた『サンセット大通り』のすごみある怪演で復活したサイレント時代の美人女優グロリア・スワンソン、二転三転する法廷劇『情婦』でゾクゾクするような妖艶さを振りまくマレーネ・ディートリッヒなど、ワイルダー作品の女優の起用と演出は見事としか言いようがないものばかり。コメディーであれサスペンスであれワイルダー作品のヒロインは華があるだけではなく、どこか切なかったり悲しかったり、ユーモアのある人間的な魅力にあふれている。それこそがワイルダー作品のヒロインと、それを演じる女優たちが愛される理由であろう。
世界中の映画人および映画ファンに支持され続け、時を経ても色あせないワイルダー作品、そしてワイルダー作品で輝いた女優たち。その魅力を味わってない人は、この機会にトライしてみてはいかがだろう。(岩永めぐみ)
映画『お熱いのがお好き』は5月6日(日)午前8:00よりWOWOWにて放送