『カポーティ』『マネーボール』のベネット・ミラー監督が、キューブリックの名作『バリー・リンドン』への思い入れを語る!
映画『カポーティ』や『マネーボール』のベネット・ミラー監督が、アカデミーのメンバーの特別試写会で、スタンリー・キューブリックの名作『バリー・リンドン』についての思い入れを語った。
同作は、あるアイルランドの青年(ライアン・オニール)が、18世紀ヨーロッパ貴族社会で成り上がっていく栄華と没落の半生を描いた作品で、当時の世界観を忠実に再現していることでも注目を浴びた作品だ。
ベネット・ミラー監督にとって名作『バリー・リンドン』とは「これまで鑑賞した映画の中でも、最も美しい映像の映画だと思っている。NASAのために開発されたレンズや、改造されたカメラなども興味あるが、映画内のすべての分野で高いレベルに到達していると思っているんだ」と語り、最も好きな作品の一つだったそうだが、これまで一度も映画館で鑑賞したことがなかったらしい。
この映画を配給したワーナー・ブラザースには、唯一アンサー・プリント(完成した映画が現像所から戻ってきた最初のプリント)しか残っていなかったそうで、「僕らが今回の試写のために、そのアンサー・プリントを送ってくれるようにワーナーに頼んだら、このプリントしかないため無理だと言われたんだよ。だが、彼らはこの試写のために特別に新たなプリントを用意してくれたんだ」と明かした。
忠実に再現された時代背景について「キューブリックが予算の都合で映画化できなかったナポレオンを題材にした映画を通して、おそらく彼はこの時代(バリー・リンドン)の背景に興味を持ったと思うんだ。ただ、そのナポレオンのリサーチが、この映画で描かれているズーム・インとズーム・アウトのスローペースで描くことを決断することになったのかまではわからないが、映画内のスタイルやストーリーが鑑賞した後に、いつの間にか僕らの中で個人的なものになっている。特にナレーションの使い方が、まるでキューブリックの頭脳をのぞいているか、あるいは彼の観察の仕方を見せられている気がして、とても興味深いと思う」と語った。
ベネット・ミラー監督は『カポーティ』を制作した後、『マネーボール』を制作するまでしばらく時間が掛かったが、キューブリック監督のように時間を掛けてリサーチすることを望んでいるのだろうか。「実は、これから撮影する予定の映画『フォックスキャッチャー(原題) / Foxcatcher』を『カポーティ』の後に制作する予定だったが、いろいろな事情で制作できなかった。そのため、急きょ『マネーボール』を制作することになったんだよ。だから、キューブリック監督のように、ぜひ、あらゆる情報を得て、数年もの時間を掛けて制作してみたいね。ただ、そうするとプレッシャーもかかってくるだろうね(笑)」と答えた。
映画は、フィルムメイカーの間では高い評価を受けている作品で、一度も鑑賞したことのない人は、ぜひ鑑賞してほしいキューブリック作品だ。ちなみにベネット・ミラー監督の次回作『フォックスキャッチャー(原題)』は、大手化学会社デュポンの跡取りであったジョン・デュポンが、数々の大会で優勝したレスリングのデヴィッド・シュルツを殺害してしまった話を描くことになっている。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)