失恋から世界破滅を幻視する!『マッドマックス2』への愛があふれた『ベルフラワー』監督が語る!
インディペンデントな才能を発掘するサンダンス映画祭に出品され、映画ファンを熱狂させた映画『ベルフラワー』のエヴァン・グローデルが、自らの失恋体験を8年かけて映画化したという本作について語った。エヴァンは監督・主演のみならず、脚本、製作、編集も務め、撮影カメラまで自作したという。
2003年、当時23歳だったエヴァンはガールフレンドにこっぴどく裏切られ、その体験をもとに脚本を書き始めた。翌年には脱稿したものの、「脚本を書いたからって自分の気持ちは何も変わらなかったし、死にたいくらい落ち込んでいたんだ」とまだどう撮るべきか思い悩む日々が続いたという。
だが、4、5年がたったとき、突然何かの啓示を受けたように視界がクリアになったとエヴァンは明かす。「脚本をより自分に誠実に書き直したんだ。そして、そろそろ映画を撮るべきじゃないかと思って、資金もないままに撮り始めた」と2008年から撮影を開始し、完成までに要した4年という時の間にすべてを失ったとエヴァンは笑う。
「お金はもちろん、資金調達のためにマイカーも免許証も登録証も取り上げられた」というだけでなく、火炎放射器を搭載した改造車メデューサを使用していたため、「警察に見つかって投獄されたら、映画の完成がさらに遠くなったらどうしよう」という心配もあったが、撮影は無事終了。そうして出来上がった本作は、『マッドマックス2』の悪役ヒューマンガスに心酔して世界滅亡を夢見る主人公と親友の友情を描いた、男のロマンチシズムが充満する作品になった。
「男同士でも普段は話さない、避けている部分に誠実に向き合ったつもりだよ。『女々しい』と言われるかなと覚悟していたけれど、そういう反応は一度もなかった。むしろ、これを観た男性客から『俺もこんなことがあって……』と、失恋の話をされることのほうがはるかに多いね」と語るエヴァンは、破滅的でエキセントリックな作風からは想像もつかないほどのナイスガイ。「今後10年で5本の映画を作りたい」と未来に目を輝かせる新しい才能を応援したい。(取材・文:須永貴子)
映画『ベルフラワー』は6月16日にシアターN渋谷ほかにて全国公開