リチャード・ギアが今年で30周年を迎える『愛と青春の旅だち』について語る!あの名シーンとなったエンディングが最初は嫌だった?
映画『プリティ・ウーマン』や『シカゴ』などのヒット作から、映画『天国の日々』や『ジャック・サマースビー』などの秀作まで数々の話題作に出演してきたリチャード・ギアが、今年で30周年を迎える大ヒット作『愛と青春の旅だち』についてニューヨークのアカデミーシアターで行われたイベントで語った。
同作は、自堕落な生活から脱却するために海軍士官養成学校の飛行士過程を志願したザック(リチャード・ギア)は、その学校の鬼教官フォーリー(ルイス・ゴセット・Jr)から厳しい訓練を受けながらも、仲間との友情や恋人ポーラ(デブラ・ウィンガー)の支えによって、困難を乗り越えていくという青春ドラマ。監督は、映画『Ray/レイ』のテイラー・ハックフォードがメガホンを取っていた。さらにルイス・ゴセット・Jrがこの作品で、アカデミー賞助演男優賞を受賞し、ジョー・コッカーとジェニファー・ウォーンズが歌った主題歌は、アカデミー賞歌曲賞を獲得した。
名作となったこの映画に出演することになった経緯は「友人に食事に誘われた場に、テイラー・ハックフォード監督が居たが、僕は彼のことを全く知らなかったんだよ。彼はそれまで2作の長編しか手掛けていなかったからね。その時に、彼はこの映画について話してくれたんだ。当時僕は30代を超えていたが、いつも若く見られていたために、テイラー監督に適役だと勧められ脚本を読んだんだ。もちろん脚本自体には惹かれたが、多少感傷的だと思っていた。でも結局、脚本を執筆したダグラス・デイ・スチュワートが、脚本を改稿するという約束で、出演することになったんだ」と、のちに世界的に大ヒットする作品を選考することになったようだ。ちなみに映画内でデブラ・ウィンガー演じるポーラが、実の父親だとザックに白黒の写真を見せるシーンがあるが、その写真はこの脚本家ダグラス・デイ・スチュワートの顔写真だそうだ。
キャストメンバーについて「父親役を演じたロバート・ロジアは、僕がロバートの舞台劇をニューヨークで観て素晴らしいと思い、彼を僕の父親役にとテイラー監督に推薦したんだ。デブラ・ウィンガーは、映画『アーバン・カウボーイ』に出演していて、あの映画もこの作品と同じようにパラマウントが製作したため、彼らは再びデブラに出演を依頼したと思う。それから、徐々にあらゆる俳優をキャスティングしていった。でも、実は海軍はこの映画に全く協力してくれなかったんだ。この映画はある意味、海軍入隊を希望する人たちをリクルートするための映画だと思っていたから、ちょっと残念だったね」と答えた。その理由は海軍はロバート・ロジアが演じた元海軍の父親が、酔っぱらいの設定であることが気に入らなかったからのようだ。さらにルイス・ゴセット・Jrのキャラクターは、当初は白人の設定で脚本には記されていたそうだ。
ルイス・ゴセット・Jrについて「僕は映画内でルイスとの空手のシーンを演じるために、空手を習っていたんだ。すぐにいろいろ技をこなせるようになったが、同じく空手を習っていたルイスは、思うように空手を使いこなせていなかったんだ。そして撮影に入ってすぐに、僕が誤って彼にキツい蹴りを浴びせてしまったんだよ! すると、ルイスは完全にキレてしまって、撮影現場から去ってしまい、二日間も戻ってこなかったんだ……。だから、翌日には彼と同じ背の高さの黒人のダブルを用意して撮影を行ったんだ……(笑)。僕らの撮影期間が短かったから、そうするしか仕方なかったが、おそらくほとんどの観客は、それを観ても、違いがわからないだろう」と思いがけないハプニングがあったことも明かした。
デブラ・ウィンガーについて「彼女は本当にカメラの前では赤心(ありのままで、嘘偽りがないこと)なんだ。カメラの前ではオープンで、無防備で居ることは難しいからね。彼女は、それを見事に映画内で演じてみせたよ」と評価した。リチャード演じるザックが、デブラ演じるポーラを抱きかかえて去っていくあの感動的なエンディングについては「僕は感傷的すぎるし、馬鹿げたエンディングで、これまでせっかくタフな男たちの映画を描いてきたのにと、テイラー監督に反対したんだ。だがテイラー監督は、とりあえず撮るだけ撮ってみようと言ってきた。撮影した後も、僕はこのエンディングでは駄目だと思っていた。それに最初にエンディングの映像を編集した時は、別の曲を使用したんだ。それが(全くダメで)、この主題歌に変わったんだが、それでもその映像とこの主題歌のテンポが合わなかった。ところが、もう一度主題歌に合わせたテンポで映像を編集し直したところ、鳥肌が立つほど素晴らしいものになっていったんだ!」と、あの伝説となった名シーンを語った。
最後に今回、観客と同時に映画を鑑賞したリチャードは「これまでテレビでこの作品が放映されていても、いつもは1、2シーン観るだけで、映画全部を観たのは、この映画が公開された年に観て以来、実に30年ぶりだ……、今回の映像にはテレビでは放映されていないフィリピンでのザックの父親との関係も含まれていて、すごく感動的な体験になったよ」と感想を述べた。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)