紀伊半島大水害の災害前と災害後に奈良で撮った映画上映 仮設住宅暮らしの被災者も多数 河瀬直美監督、現状訴える
昨年9月の紀伊半島大水害で被害を受けた奈良県南部への復興支援イベント「南からの風」が24日、東京・末広町のアーツ千代田3331で行われ、共に奈良出身の河瀬直美監督と実業家・藤沢久美がトークショーを行った。
この日は、メキシコの新鋭監督べドロ・ゴンサレス・ルビオ監督が災害前の奈良・十津川村で撮影した映画『祈』と、河瀬監督が災害2か月後に同村山天地区を訪れて撮影した動画「美しき日本」も上映された。山天地区は災害時に孤立し、一時避難警戒地区に指定されるほど甚大な被害を受けたが、河瀬監督のカメラは「自分らが頑張らな、先祖さんに悪い」と復旧活動に精を出す、たくましき被災者を映し出す。
河瀬監督は「東日本大震災があったばかりで、この村の人たちが日本の中心部から忘れられているのではないかと心配した。でも山天へ行ってたら、逆に励まされましたね」と、笑顔で迎えてくれたお婆ちゃんたちからパワーをもらったようだ。
もっとも水害の爪痕はまだ残っており、仮設住宅暮らす被災者や、川の生態系も大きく変わってしまったという。その一方で観光客を呼び戻すための推進活動も盛んに行われているが、先日の台風4号がまたも紀伊半島を襲い、一部で土砂崩れや避難勧告が出されるなど厳しい現実もある。
それでも河瀬監督は「十津川村のあたりはクーラーがない。山から自然の風が吹いてくるんですよ」と今夏の電力不足問題を意識した発言でしっかりPR。
藤沢も「十津川村は秘境で知られ、奈良市からでも車で3時間かかる。東京へ出た方が早い」と発言して笑わせつつ、「東日本大震災にユーロ危機など、世界は今、どこへ向かうのか? と皆が不安に思っている時期。そういう時こそ、原点へ戻るべき。奈良は日本の原点。奈良へ来て、日本を見つめ返して欲しい」と最後は経済評論家らしいコメントで観客に訴えていた。(取材・文:中山治美)
同イベントは8月29日に名古屋・ウィンクあいちでも行われる。申込はなら国際映画祭事務局へ(http://www.nara-iff.jp/projects/post-5.php)
美しき日本(http://nara.utsukushiki-nippon.jp/)