被災地を照らした鎮魂の花火「LIGHT UP NIPPON」のドキュメンタリーが公開、主催者が語る被災地への思いとは?
今月7日、東京に住む会社員・高田佳岳さんが、仲間と共に昨年8月被災地での花火大会開催を実現するまでの奮闘を追ったドキュメンタリー映画『LIGHT UP NIPPON ~日本を照らした、奇跡の花火~』の上映が始まった。今年8月11日に開催される第2回目の花火大会に向け、今も忙しい日々を送っている主催者の高田さんが被災地への思いを語った。
映画『LIGHT UP NIPPON ~日本を照らした、奇跡の花火~』場面写真
全ての始まりは、震災から約2週間がたった昨年3月末のある日のこと。「東京湾大華火」が中止になったことを知った高田さんは、「使用するはずだった花火を、東北で打ち上げることができないだろうか?」と思いつき、翌日には花火師の元へ向かっていたという。「花火師の方に、江戸時代の花火大会には慰霊や鎮魂の意味がこめられていたことを教えていただきました、絶対に実現したい、東北の人たちを少しでも明るくしたいという気持ちで実現を決意したんです」
「昔から、何も考えずに行動しちゃうタイプ」と笑う高田さんは、東京都内の広告代理店に務める34歳。平日は自分の仕事をこなしながら、仲間たちと資金を集め、週末には被災地を訪れて地元の人々との話し合いを進めた。その結果、実行委員会は約4か月で7,000万円以上を集め、震災から5か月目の8月11日、岩手、宮城、福島、計10か所での花火同時打ち上げに成功した。
花火大会当日、高田さんは、大学院時代に2年間滞在していた岩手県大槌町の会場にいた。「会場から、打ち上げ場所まで結構遠かったんですが、花火がドーン! と打ち上げられた瞬間、子どもたちがワ~~ッて声を上げながら、大はしゃぎで花火に向かって走っていったんです」、子どもたちの笑顔は今でも高田さんの脳裏に焼きついているという。
ドキュメンタリーが完成して初めて、ほかの会場の様子を目にしたという高田さんは、「全部の会場で子どもたちが同じようにキャーキャー飛び上がりながら喜んでいました。涙を流されている方の姿も見て、本当にやってよかったって心から思いました。うれしかった」と笑顔を浮かべた。
現在、高田さんは、花火大会運営のかたわら、潜水士の資格を生かして、がれきを海から引き上げる海底清掃の活動も行っている。震災から1年、いまだ復興という言葉からは程遠い状況を、目にしているという高田さんは、「夏になって、8月11日の花火大会の日には、東北の人は今も頑張っていることを思い出してほしいんです。これから10年、20年先でも、彼らが本当に復興したって言えるまで。地元から、もうやらなくていいって言われるまでずっと続けていきたい」と語った。映画の収益は、今年8月11日に被災地で開催される花火大会の費用に充てられる。花火が照らした東北の子どもたちの笑顔を、ぜひ映画館で目にしてほしい。(編集部:森田真帆)
映画『LIGHT UP NIPPON ~日本を照らした、奇跡の花火~』は新宿バルト9ほか全国にて公開中