『海猿』シリーズ大ヒットの理由とは?監督&プロデューサーが語る映画術!
映画『BRAVE HEARTS 海猿』が大ヒット公開中の羽住英一郎監督と臼井裕詞プロデューサーが21日、早稲田大学で開催された「株式会社フジテレビジョン寄付講座 映画のすべて マスターズ・オブ・シネマ」に出席し、同シリーズ成功の裏側を語った。
映画版第1作の興行収入17億4,000万円の皮切りに、71億円(同2作)、80億4,000万円(同3作)と右肩上がりの成績を記録している『海猿』シリーズ。作中で描かれるどんな困難にも諦めない精神が多くの人たちの感動を呼び起こしているが、臼井プロデューサーいわく「『海猿』は逆境と挑戦の歴史」だったという。
例えば、広島・呉で合宿生活を行って撮影した第1作の製作費は約2億5,000万円。臼井プロデューサーは「この予算では地方ロケもできなければ、水中セットの撮影もできない。東京のロケで、家のセットを一つ建てたら終わる値段」と語っており、物語のスケールに見合った金額とは言い難い。
しかし、安く利用できる施設を探し出したり、セットを使い回したり、さらにお金が掛かりそうなシーンは「固唾(かたず)をのんで見守る人たち」を登場させることで処理するなど、「スタッフみんなで知恵を出し合って、逆境を乗り越えてきた」とは羽住監督の言。「やっぱり周りに諦めない仲間がいると楽しめるんですよ。それは(予算が増えた)最新作でも変わらない」と羽住監督は自負する。
シリーズを続ける中で、それぞれのキャラクターが年齢を重ねていくのもシリーズの特徴だ。羽住監督は「『1』はデートムービーとして成立したが、『2』で結婚、『3』では子どもが生まれ、だんだん夫婦の話になっていった。しかしそれだと、今までのファンにしかアピールしない話になってしまい、先細りになってしまう。だから今の時代の高校生、大学生が感情移入しやすい窓口を作らなくてはいけない」と語ると、「今回だと(佐藤隆太演じる)吉岡に新しい恋人を作るなど、新たなお客さんへのサービスを考えながら、いつも真摯(しんし)に取り組んでいます。あとタイトルに『3』とか『4』とかいう数字をつけないことも大切ですね」とそのヒットの裏側を解説。会場の学生たちは熱心に耳を傾けていた。(取材・文:壬生智裕)
映画『BRAVE HEARTS 海猿』は全国東宝系で公開中