衝撃!自分のセックス映像を流通させる代償に格安でプレイ可能な売春宿!さまざまな「夜のお仕事」に驚がく!!
11日、渋谷のシアター・イメージフォーラムで行われた、映画『眠れぬ夜の仕事図鑑』大ヒット御礼トークショーに来場した想田和弘監督が、『いのちの食べかた』でも知られるニコラウス・ゲイハルター監督について大いに語った。風俗嬢、警備員、警察官、議員、エンジニア、介護職員、ローマ教皇、DJなどなど……。本作は、ヨーロッパ各国の「夜に働く人々」の姿を追ったドキュメンタリー作だ。
劇中には、チェコの有名売春宿の室内カメラで撮影されたという、一般客と風俗嬢とのセックス映像が大画面に映し出されるシーンがある。実はこの売春宿、映像に映ってもいいと志願した男性が受付で同意書にサインをしたうえで、格安料金でプレイできるというシステムなのだとか。こちらで録画された映像はDVDで販売されたり、有料ネット会員に向けて配信されるという。これには想田監督も「これは驚きですよね。しかも風俗嬢の方の裸体が生々しくて。それも商品になっているというか、(セックスさえも)喜んで消費されるというのがすごいと思いました」と目を丸くさせる。
ナレーション、音楽、字幕を排し、対象物を淡々と映し出していくゲイハルター監督の作品スタイルは、自ら「観察映画」を標ぼうし、ナレーション、音楽、字幕などを排する想田監督のスタイルにも通じるところがある。「それぞれの観客に解釈がゆだねられているのが僕にはたまらないですね。観れば観るほどに細部に仕掛けがあることが分かって面白い」と共感の念を隠さない。
「観察映画というのは、僕自身が観察するだけでなく、観客の方にもよく観てもらいたいという意味もある」と切り出した想田監督は、「現在はボーっと観ていても、噛み砕いて分かりやすい“離乳食的な”映像が加速度的に増加していますよね。そうすると観る方も受け身になってしまうんで、僕は不満ですね。作り手としては、こちらが投げたボールをキャッチャーとなって受け止めるだけでなくて、バッターとして打ち返して欲しいんです。僕の新作の(10月公開予定の平田オリザに迫ったドキュメンタリー)「演劇」(上映時は『演劇1』『演劇2』の二部構成)は、こんな映像が5時間42分続くんですけど大丈夫ですかね。まぁ僕の方がゲイハルター監督よりも少しはサービス精神があるとは思いますけどね」と冗談交じりながらも、意欲的なコメントで会場を沸かせた。(取材・文:壬生智裕)
映画『眠れぬ夜の仕事図鑑』は渋谷のシアター・イメージフォーラムで公開中