デイヴ・マシューズ・バンドのバイオリニスト、ボイド・ティンズレーを直撃!彼が制作した実験的な映画とは?
アメリカの人気バンド、デイヴ・マシューズ・バンドでバイオリンを演奏するボイド・ティンズレーが、実験的な映画『フェイセズ・イン・ザ・ミラー(原題) / Faces In The Mirror』を制作し、その新作とバンドについて語った。
同作は、父親を亡くしたばかりの若者ベン・フィッシャー(ライアン・オール)は、父親の葬式のために実家に戻ってくるが、仕事で自分を無視してきた父親を許せずにいた。だがある日、幻想的な世界に引き込まれ、謎めいた人々によって、彼の苦痛が解き放たれていくというドラマ調の作品で、映像とナレーションを交錯させながら、音楽と共につづっていった実験的な作品だ。
ボイド・ティンズレーは、1991年にデイヴ・マシューズ・バンドに加わり、同バンドでバイオリンの演奏だけでなく、デイヴ・マシューズとともに共同作曲したり、バックボーカルも務めている。
この映画は、詩人リタ・ドーヴ(ピューリッツァー受賞経験のある詩人)からインスピレーションを受けて製作したそうだ。「彼女がヴァージニアの大学で教鞭を取っていた時に、この大学のイベントとして行われた“詩と音楽”というイベントに参加しないかと彼女から連絡があって、彼女の詩を朗読するように頼まれたことがあったんだ。その時、ちょうどこの映画の企画を考え始めたときで、それなら彼女の詩を引用してこの映画に使用しようと思ったんだよ」とボイドは語った。映画内では印象的な映像と彼が作曲した音楽の中で、リタ・ドーヴの詩を語るナレーションが脳裏に刻まれていく。
父親が聖歌隊のディレクター、叔父がベーシストのボイドは、育った環境に常に音楽があったようだ。「音楽を本格的に始めたのが中学校くらいで、最初はギターを弾きたいと思い、音楽のクラスの授業を受けようとしたら、そのクラスが実は弦楽オーケストラの授業だったんだよ……(笑)。そこで、バイオリンにトライし、その時に一挙にバイオリンの魅力にハマってしまった。それから、僕はこのバイオリンをクラシックで演奏するだけでなく、ジャズやロックでも演奏してみたらどうかと思い始めたんだ」と語った。
デイヴ・マシューズ・バンドに加入することになった経緯について「それまではボイド・ティンズレー・バンドというバンドで、4年間活動していたんだ。ところが、デイヴ・マシューズ・バンドが初めて僕がバイオリンでロックできるバンドとなったんだ。加入した経緯は、ある日デイヴ・マシューズがこれから楽曲“Tripping Billies”のデモテープを制作するから来ないかと言ってきて、一度参加した後、バーで行うライヴにも参加しないかと、その後も何度か誘われ、そのうちにデイヴ・マシューズから、ぜひバンドに加入してほしいと言われ、加入することになったんだよ」と明かした。そして彼を選択したデイヴ・マシューズに感謝しているとも話した。
主演ライアン・オールについて「彼と出会ったの10年前で、彼はまだその時は俳優ではなかったが、一目で彼が俳優にふさわしいと思ったんだ。それから、彼に俳優の授業を受けるようにと指示したり、サポートしていったりした。だから、この映画の企画を立ち上げた時に、真っ先に声をかけたのが彼だったんだ」と語る通り、映像中心の中で、印象的な存在感を放っている。
最後にボイドは、デイヴ・マシューズ・バンドを通して境界線のないクリエイティブな環境を知り、新たな道を開拓したいと語っていた。今後の彼の活躍に期待したい。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)