ベネチア映画祭、金獅子賞に違う作品?韓国映画『ピエタ』でなく『ザ・マスター』のハズが受賞規定により阻まれる
現地時間8日に行われた第69回ベネチア国際映画祭授賞式では、最高賞の金獅子賞にキム・ギドク監督の『ピエタ(原題) / Pieta』が韓国映画として初めて選ばれたが、独特な受賞規定がなければ、ポール・トーマス・アンダーソン監督の『ザ・マスター(原題) / The Master』が同賞に輝く予定だったようだ。
審査委員長のマイケル・マン監督はベネチア映画祭の受賞規定について、「『作品には賞は一つだけ』というルールがありますが、俳優賞は例外でほかの賞と共に受賞することができます。ただし、俳優賞と金獅子賞を同時に受賞することはできないのです」とHollywood Reporterに説明。
「『ザ・マスター』でのアンダーソン監督の手腕は素晴らしく、銀獅子賞(優秀監督賞)にふさわしいものでした。さらに同作でホアキン・フェニックスとフィリップ・シーモア・ホフマンは卓出した演技を見せており、優秀男優賞にふさわしいものでした」と続けている。『ザ・マスター』の3人に賞を与えるため、金獅子賞は審査員団が同作同様に高く評価していた『ピエタ』に譲る形になったようだ。
配給のワインスタインも、授賞式の前日の夜に、映画祭から審査員団が金獅子賞を『ザ・マスター』に決めたという連絡が入ったが、その後に受賞規定の問題が出てきたため受賞内容が変更になったことを知らされたと証言しているとのこと。アンダーソン監督はこの件に関し、「映画祭が与えてくれた賞がどんなものであれ、非常に光栄に思っております。うわさ話は耳に入っていますが、何にせよ、われわれがいただいたものに満足しています」とコメントしている。
映画『ザ・マスター』は、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のアンダーソン監督5年ぶりの新作。新興宗教団体のカリスマ教祖(フィリップ)と、彼の右腕となり教団にのめり込んでいく男(ホアキン)のドラマが描かれる。新興宗教団体サイエントロジーをモデルにしているともいわれており、公開前ながらすでに物議を醸している問題作だ。(編集部・市川遥)
映画『ザ・マスター(原題) / The Master』は2013年3月TOHOシネマズ シャンテほか全国公開