役所広司、現実となった原発問題に複雑な思い 『東京原発』撮影振り返り
6日、俳優の役所広司が川崎市で開催中の「第18回KAWASAKIしんゆり映画祭2012」に駆け付け、2004年公開の映画『東京原発』上映前に山川元監督と共に舞台あいさつに臨んだ。
「第18回KAWASAKIしんゆり映画祭2012」『東京原発』舞台あいさつギャラリー
本作で主演を務めた役所が「『東京原発』という映画を、もう一度大きなスクリーンで観てもらいたかった」と本作を映画祭に推薦した理由を明かすと、山川監督は「2002年に製作して公開までなんと2年も掛かったんです」と公開まで紆余曲折があったとコメント。さらに「役所さんに出てもらったのに、お蔵入りにするわけにはいかないと焦ったのですが、やっと公開しても東京では2館くらいしか上映されずに、鳴かず飛ばずでした。役所さんには謝りたい気持ちでいっぱい」と語った。
一方の役所は「原発については、本などで読んでいて恐ろしいとは思っていたが、3.11で(原発問題が)リアリティーを持ってしまい非常に不幸なこと。撮影はほとんどがセットでしたが、原発についていろいろな話し合いをして、非常に良い時間を過ごした現場だった」と撮影当時を述懐しながらも、複雑な胸中を明かしていた。
また、上映前の観客を前にして役所は「メッセージ性の強い作品ですが、ユーモアを交えエンターテインメント性が高いように作り上げられている。観賞後、皆さんでいろいろな話をしていただけたら」とアピール。呼応するように監督は「家に帰って話がしたくなる。俳優の顔ぶれをみてもなぜヒットしなかったか不思議なくらい」と役所広司、段田安則、岸部一徳の出演作にもかかわらず、興行的に成功しなかったことに首をかしげてみせると、「宣伝が良くなかったのかも。もちろんテレビで宣伝するわけにはいかなかったから」と扱いづらい作品テーマであったことに触れていた。
今年で第18回を迎えた「KAWASAKIしんゆり映画祭」は、川崎市アートセンターをメイン会場に名作やドキュメンタリー、次世代を担う新進監督作品などを9日間にわたって上映。原発問題を扱ったドキュメンタリー特集も企画されている。(取材・文:池田敬輔)
「第18回KAWASAKIしんゆり映画祭2012」は10月14日まで開催