アカデミー賞日本代表『かぞくのくに』に韓国俳優ヤン・イクチュン号泣
第85回アカデミー賞外国語映画賞の日本代表作品『かぞくのくに』が、第17回釜山国際映画祭(BIFF)「アジアの窓」部門で上映され、ヤン・ヨンヒ監督、安藤サクラ、井浦新、ヤン・イクチュンがティーチインに参加した。
『Dear Pyongyang ディア・ピョンヤン』などで知られる在日コリアン2世の監督が、自身の家族をモデルに脚本を執筆した初の劇映画『かぞくのくに』。病気治療のために北朝鮮から一時帰国した兄(井浦)と、彼を迎える家族の姿とやり場のない感情をつづった人間ドラマだ。「映画をご覧になれば、わたしがこの作品を作るに至った理由がおわかりだと思います。俳優たちには細かい演出はせず、気持ちの動きだけ説明しました」と語る監督は、韓国でのお披露目に感慨深げだ。
そんな監督の分身となる役を務めた安藤は、二つの国に引き裂かれた家族の悲劇に「ショックを受けたし、とにかく腹が立った。今は韓国での上映に頭と心が混乱していて、ゲロを吐きそう」とコメント。一方、興奮を隠せない安藤の横で男泣きしたのが、『息もできない』のヤン・イクチュンだ。「試写室で観たときは画面が小さかったせいか泣かずにいられましたが、韓国の観客と共に大スクリーンで再見したら、家族の悲しみに胸がいっぱいで言葉になりません」と話すのが精一杯だった。
また、監督の心情を察して泣かずにいられなかったイクチュンと「同じ気持ち」という井浦には、客席から質問が殺到。コリア語のセリフにも挑んだ役づくりについて聞かれると「共演者みんなの気持ちが一つになって取り組んだ作品。心が整えば言葉の壁はお芝居の上でも重要ではなくなってくる。かわいそうな家族に見えないように、悲しい話にならないように、そんな思いでこの作品に向き合っていました」と答えた。
客席を埋め尽くした観客の表情と拍手の大きさに、アジア・プレミアの大成功を確信。来年1月に発表される第85回アカデミー賞ノミネートへの期待も膨らまずにいられない!(取材・文:柴田メグミ)
映画『かぞくのくに』は全国公開中