井浦新、若松孝二監督葬儀で涙の弔辞 事故当日一緒だった…
今月12日に東京都新宿区内でタクシーにはねられ、17日に亡くなった映画監督の若松孝二さんの告別式が24日、青山葬儀場で営まれ、井浦新が弔辞を読み上げた。この日は寺島しのぶら、およそ600人の参列者が若松監督との最後の別れを拍手で見送った。
出棺のとき、参列者たちは大きな拍手で若松監督を送り出した。これはギリシャの巨匠テオ・アンゲロプロスの映画『旅芸人の記録』で、旅芸人の葬儀を涙でなく拍手で見送るラストシーンに衝撃を受けたという若松監督にささげたもの。この場に参列していた井浦新、寺島しのぶらに拍手で見送られ、若松監督を乗せた車は桐ケ谷斎場へと走っていった。
この日の告別式には、若松監督の戦友である足立正生、(株)「游学社」の遠藤眞彌氏、そして『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)』などに出演した井浦新の3人が弔辞を読み上げた。祭壇に飾られた若松監督の写真をじっと見つめた井浦は、10分以上の弔辞をメモを見ることもなく送った。
若松監督が事故に遭ったその日、新宿で一緒にそばを食べていたという井浦。若松監督は楽しそうに映画の話をしていたといい「その日、監督をタクシーに乗せて見送った背中が最後の別れになるとは考えもしませんでした。見送った数分後に事故に遭われ、痛かったことでしょう。でも僕は知っています。ギリギリまで監督も心を躍らせながら笑顔で歩かれていたんですよね。監督の嫌いなしみったれた空気にしてしまって、すみません」と声を震わせる。
そして「監督はいつも心の準備をさせてくれませんでした。僕はそんな若松監督の撮影現場が大好きでした。現場が終わるといつも優しい顔で役者やスタッフを温かく包んでくれて。僕は人間・若松孝二に影響を受け、勉強をさせてもらいました」と謝辞。そして「こんなにたくさんの言葉をいただき、僕の人生を変えてしまうような大きな経験を、このたった数分で語ることはできません……。監督、どうもありがとうございました。ゆっくり休んでください」と語り、涙を浮かべた。(取材・文:壬生智裕)
若松孝二監督の遺作『千年の愉楽』は来春公開予定