中国語を話す宇宙人が意味するものは?現実を反映した映画のユニークエイリアンたち!
尖閣諸島の領有権をめぐり日中間の緊張が高まる中、中国語を話す宇宙人をめぐるフランスの異色SF映画『宇宙人王(ワン)さんとの遭遇』が日本公開を迎える。「中国人差別を助長」「台頭する中国への西側社会の不信」などと騒がれた本作だが、果たして映画の中に登場したさまざまな宇宙人たちは、現実社会の出来事が、どのように反映されていたのか。
1985年公開の映画『第5惑星』に登場するのは、爬虫類のような見た目のドラコン星人。敵対する地球人にとっては野蛮な、差別すべき存在にしか見えない。しかし劇中、一人のドラコン星人と協力してのサバイバルを余儀なくされた地球人は、彼らが信ずる経典に従って生き、己の血統を大事にするなど、地球人と変わらぬ内面を持つことを知る。
一方、1978年の『SF/ボディ・スナッチャー』に登場するのは、地球人を次々とコピーして入れ替わってゆく侵略者。隣人がある日信頼できない存在となる恐怖が描かれ、ドン・シーゲル監督による1956年のオリジナル版は、共産党主義者を弾圧する「赤狩り」の影響を受けているといわれている。ちなみにリメイク版には、一世を風靡(ふうび)した人面犬も登場する。
そのほか2005年の『銀河ヒッチハイク・ガイド』に登場するヴォゴン人は、非常に官僚的で肉親を助けるにも書類が必要という、どこかで聞いたような種族。南アフリカで難民キャンプに押し込まれた宇宙人が登場する『第9地区』は、人種隔離政策「アパルトヘイト」を彷彿(ほうふつ)とさせた。
もちろん、イカっぽいワンさんの見た目がシュールな笑いを生む『宇宙人王(ワン)さんとの遭遇』も、西側諸国が中国に向ける視線を反映しているのは間違いないだろう。一見メチャクチャなだけに見える映画の宇宙人たちが、そんな世相を反映しているのかに思いをめぐらすのも面白そうだ(編集部・入倉功一)
映画『宇宙人王(ワン)さんとの遭遇』はシアターN渋谷にて公開中