映像化不可能といわれたミステリー小説の映画化にあえて挑む! 映画界の飽くなき挑戦
ミステリー小説と映画の相性が抜群なのはよく知られるところであり、近年でも東野圭吾、湊かなえをはじめとする多くのミステリー作家の作品が映像化され、一つのブームとなっている。今回はその中で、あえて映画化不可能とうたわれた日本のミステリー小説の映画化に挑んだ作品に迫ってみた。
映画化不可能の理由にはいくつかあるものの、最も多いのが小説ならではの仕掛けがあるパターン。殊能将之原作の『ハサミ男』や伊坂幸太郎原作の『アヒルと鴨のコインロッカー』はそれぞれの方法で、そのハードルを越えた稀有(けう)な作品。この手の作品は、映画製作陣の苦労がうかがえるということもあり、小説を読んでから映画を観るのがおすすめだ。
もう一つ、映画化不可能とされるのは、原作小説があまりに長すぎるパターン。文庫本で1,000ページを超えることもあり、時に「サイコロ本」とも称される京極夏彦の人気シリーズを原作にした『姑獲鳥の夏』『魍魎の匣』、そして宮部みゆきのベストセラーを中居正広主演で映画化した『模倣犯』が代表格。長大な原作をどう再構成するかに作品の出来が懸かってくるため、時には原作とはかけ離れた作品になっているケースもあるので注意が必要だ。
そして、近年よくあるのが、あまりに残虐な描写があるために映画化NGというパターン。社会現象を巻き起こした『バトル・ロワイアル』が取り上げられがちだったが、2010年には映画『告白』が公開されて大ヒット。今月10日から公開される『悪の教典』もそんな1本で、担任するクラスの生徒全員を殺そうとする教師が主人公となっている。
『悪の教典』では猟銃での殺人シーンなど目を背けたくなるシーンが盛りだくさんのため『バトロワ』『告白』同様、R15+指定されているが、原作の魅力をそがないという意味では正しい映画化。ある意味で、原作ファンに最も誠実な作品づくりを行っているといえるかもしれない。(編集部・福田麗)
映画『悪の教典』は11月10日より全国公開