“エログロ”取り扱い注意!現代アートの異端児・会田誠、ボヤきまくりの映画初日
10日、渋谷のユーロスペースで映画『駄作の中にだけ俺がいる』初日舞台あいさつが行われ、現代アート界の異端児・会田誠が渡辺正悟監督と共に登壇した。
「巨大フジ隊員VS キングギドラ」「切腹女子高生」など、これまで「エログロ」「変態」「少女趣味」といったレッテルをはられそうな過激な作品を数多く発表してきた会田は、メディア側の自主規制などもあって、これまで“取り扱い注意の作家”として捉えられてきた。しかし今月17日から、六本木の森美術館で、彼にとっては初となる美術館での個展「会田誠展:天才でごめんなさい」が開催されるなど、改めてその動向が注目を集めている。
その作風などもあって、世間からは「危険な人」という風評が流れていた会田。そんな彼を撮ろうと思った理由を渡辺監督は「怖いもの見たさ」だと切り出し、「どれくらい危険なのか様子を見たいと思って、カメラマンだけを先に送りこんで様子を見たんですが、『大丈夫そうだよ、噂と違うよ』ということでそこからズルズルと撮影を行った」と付け加えた。
しかし、いざ撮影に入っても、会田は酒とたばこ三昧で、のらりくらりと描けない言い訳を繰り返した。遅々として進まない制作過程に振り回されっぱなしだった、と振り返る渡辺監督は、「会田さんはジェットコースターのようで、ことごとくこちらの狙いを外してくる。その外され方にマゾヒスティックな快感がありました」と笑ってみせる。
今回の撮影では、会田にワイヤレスマイクを仕込み、「描けないな」というような会田の制作過程のつぶやきがつぶさに記録されている。これには会田も「これは悪夢でしたね。トイレでのションベンの音まで(監督たちに)聞かれちゃってるんだから」とボヤき、さらに出来上がった作品についても「やはり(渡辺監督は)ドキュメンタリーのプロだから、プロらしい嘘で作られた作品ですよ。編集のマジックというかね。ゾッとしましたよ」と苦笑い。
さらに一週間後を迎えた個展についても「まだ全然できていない。今、涙目になりながら描いている」とボヤき続ける会田。この舞台あいさつが終わった後も再び作業を進めなくてはならないそうで、「半年前とか1年前とかだったら、お客さんにこういう気持ちにさせてやるぜ、といったような意気込みも言えるんですけど、今言えるのは、一筆でも多くいれるんで、お許しくださいということ」と殊勝なコメントを発し、会場を笑わせた。(取材・文:壬生智裕)
映画『駄作の中にだけ俺がいる』は渋谷ユーロスペースほかにて全国順次公開