寺島進、学生とプロとの映画制作コラボプロジェクトに参加!原点回帰を語る
北野映画常連のコワモテ俳優として注目を浴びて以降、父親や刑事、医者などさまざまな役柄への挑戦を続けてきた俳優・寺島進。女優の高橋惠子が23年ぶりに主演を務めた最新作『カミハテ商店』で、映画学科の学生たちとのコラボレーションを経験した寺島が、「自らの原点回帰になった」という撮影を振り返った。
本作は、京都造形芸術大学映画学科の学生が、プロの俳優やスタッフと共同で劇場用映画を毎年1本制作するというプロジェクト。第3弾となる本作は、自殺の名所である崖の傍らで小さな商店を営み、自殺者の最後を見つめ続けてきた初老の女性・千代の孤独と再生を山本起也監督が描く。
都会で暮らし、思うようにいかない仕事に疲弊しきった千代の弟・良雄の悲哀を見事に表現してみせた寺島。良雄が心引かれていくスナックのホステスを演じたのは、撮影当時、映画学科の学生だった平岡美保だ。寺島との共演に緊張していた平岡を和ませるために、寺島は「デート」を提案したそう。「映画には出てこない裏設定で、二人がおそろいの腹巻をしているっていうのがあったんだよ。だから彼女を連れてデパートに行って腹巻を選んだよ」と笑う。寺島の飾らない優しさが、平岡の心を開いたのか、作中ではナチュラルな演技で寺島との軽妙なやりとりを見せている。
俳優を含めたスタッフの半数以上が同大学の学生たち。経費の節約の一貫として、テレビドラマや映画では当たり前のように出てくるロケ弁の代わりに、学生たちが作った素朴な食事が振舞われた。寺島は「決して豪華なご飯じゃないんだけど、温かい白ご飯と味噌汁だけでなんだか心がいっぱいになったね」と語る。
現場では、学生たちの映画へのひたむきな情熱を毎日のように感じていたという。「情熱を忘れちゃいけないな……ってね。原点に戻ったような気持ちになれたよ」。普段はコワモテの寺島も、学生たちとの現場を振り返ると、柔らかな笑顔を浮かべていた。(編集部・森田真帆)
映画『カミハテ商店』は11月10日より ユーロスペース、島根・松江東宝5ほかにて全国順次公開