キーラ・ナイトレイ主演の話題作『アンナ・カレーニナ』とは
映画『プライトと偏見』や『つぐない』などでおなじみのジョー・ライト監督が、キーラ・ナイトレイ主演の話題作『アンナ・カレーニナ(原題) / Anna Karenina』について語った。
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同作は、政府高官カレーニン(ジュード・ロウ)の妻で、一人息子の母アンナ(キーラ・ナイトレイ)は、険悪な状態が続く兄夫婦の諍いを仲裁するためにモスクワを訪れ、そこで若い貴族の将校ヴロンスキー(アーロン・ジョンソン)と出会う。お互いに惹かれ合った二人は激しい恋に陥るが、その行為から社交界から締め出されていく。ロシアの偉大な作家レフ・トルストイの同名小説を映画化したジョー・ライト監督は、主演のキーラ・ナイトレイとは、今作で3度目のタッグとなる。
この名作を脚色したのは、映画『未来世紀ブラジル』『恋におちたシェイクスピア』の脚本家トム・ストッパードだ。「トムはずっと僕のヒーローだった。彼が脚色しなければ、この映画を制作することもなかった。もちろん、僕は初期の段階では(名作の制作に)恐怖を感じていた。普通、才能のある人物と会話すると、自分の小ささに気付かされるが、トムと会話をすると自分がより大きな人物になった気がするほど、刺激を受けるんだ。そんな彼とは、どのように脚色していくかという話し合いに3か月も費やしたよ。彼自身は、その期間に4、5回原作を読み返しながら脚色し、そして出来上がった初稿のうち80%は、最終稿としても残されているほど、素晴らしい出来だった」と明かした。
映画内でヴロンスキーとアンナが踊る社交ダンスの演出について「あのダンスは、振り付け師シディ・ラルビ・シェルカウイによるものだ。彼はモダンダンス界では世界的な人物で、オランダにダンスカンパニーを持っている。彼とは、いろいろなブロッキング(舞台上の立ち位置と動く方向)を試しながら、感情表現できるダンスを共に試してみたんだ。当然、俳優とのダンス・リハーサルもかなりこなすことになったよ」と話した通り、このダンスが原作を知らぬ観客さえも、おそらく魅了することになるだろう。
過去に映像化された『アンナ・カレーニナ』では、地方の地主リョーヴィンはほとんど描かれなかったが、今作ではどうなのか。「原作『アンナ・カレーニナ』は、リョーヴィンがいなければ成り立たない。もちろん、ボリュームのある原作の内容から他の映画では、このリョーヴィンの箇所をカットしたのは理解できるが、リョーヴィンをカットしてしまうと、かなりもの悲しいストーリー構成になってしまうんだ。でもリョーヴィンというキャラクターは、クールで、時々暴力的でもあるが、偽善者とは全く反対の人物で、愛に信念を持っている」と語り、もしリョーヴィンがいなければ、不倫に陥るアンナだけが、アンチヒロインとして描かれてしまうとも答えた。
最後にジョー監督は、今作ではキャラクター全員がまるで舞台で人生を過ごしているかのような斬新な設定で描き、そのアイデアはロシア革命の頃の舞台劇の影響から生まれ、さらにロシアの絵画から学んだことは、セットの鮮やかなデザインとして施すことになったと話した。映画は、偉大な文学作品を見事に現代化した秀逸な作品に仕上がっている。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)