砂漠で鮭釣りって!…どゆこと?ユアン・マクレガー×ラッセ・ハルストレム監督新作での仰天挑戦
『ギルバート・グレイプ』のラッセ・ハルストレム監督、ユアン・マクレガー主演の新作映画『砂漠でサーモン・フィッシング』の舞台裏には、映画の内容と同様、困難に立ち向かい続けた一流スタッフたちのあくなき挑戦が隠されていた。
中東にある砂漠の国イエメン大富豪の「砂漠の国イエメンで、鮭釣りがしたい」というあり得ない要求に、イギリスが莫大(ばくだい)な費用を掛けてチャレンジする、という前代未聞の国家プロジェクトを描き出した本作。
2007年に60歳の新人作家ポール・トーディが発表した原作は、Eメール、日記、新聞、雑誌といったさまざまなスタイルの文書から構成されたものであったため、映画化は困難だといわれ続けていた。しかしそんな映画化プロジェクトに果敢に立ち向かったのが、『スラムドッグ$ミリオネア』でオスカーを獲得した脚本家サイモン・ボーフォイ。
彼が得意とする物語の構成力、セリフの豊かさ、イギリス人らしいユーモアセンスなどは本作でも健在で、この小説の魅力を余すことなく再構築、見事に脚本に落とし込んだ。ハルストレム監督もボーフォイの仕事ぶりを「どんな脚本家にとっても挑戦だった原作を見事にやり遂げ、素晴らしい脚本を仕上げてくれた。映画におけるユーモアの見せ方を熟知しているのが彼の強みだ」と絶賛する。
一方、今回の撮影スタッフは主にイギリス人とモロッコ人の混合部隊となったが、モロッコに建てられたセットが何度も嵐で流されてしまうなど、映画撮影の裏側こそがまさに「イエメン鮭プロジェクト」のような困難さを伴った。しかしハルストレム監督が「才能あふれる一流の面々」と信頼するスタッフたちは、その困難をチャンスに変えてみせた。まず嵐で破壊された後の、泥だらけのセット風景を撮影。その後に元のセットに組み直して撮影。それらのカットを編集で組み替えることによって、この奇想天外な物語に圧倒的なリアリティーをもたらした。
ユアン・マクレガー、エミリー・ブラント、クリスティン・スコット・トーマスといった一流キャスト陣もこのユーモラスな物語の中で伸び伸びとした演技を披露。まさに一流のスタッフ、一流のキャストが困難を乗り越えて生み出した本作だけに品質は間違いなし。映画ファンにとって見逃せない一本だ。(取材・文:壬生智裕)
映画『砂漠でサーモン・フィッシング』は12月8日より丸の内ピカデリーほかにて公開