まるでアカデミー賞級俳優の製造マシン!ラッセ・ハルストレム監督の演出術
最新作『砂漠でサーモン・フィッシング』を発表した名匠ラッセ・ハルストレム監督が、俳優たちからオスカー級の演技を引き出す秘訣(ひけつ)を語った。
砂漠の国イエメンで鮭釣りをしたい、という突拍子もないプロジェクトのてん末を描いた本作。主演のユアン・マクレガーは、生真面目で不器用な変わり者の水産学者ジョーンズ博士を好演しており、プロデューサーのポール・ウェブスターが「過去最高の演技」と絶賛。また、エミリー・ブラントが恋にも仕事にも情熱的な投資コンサルタントを魅力的に演じるほか、クリスティン・スコット・トーマスが出世にしか興味のない、やり手の首相広報担当官をイヤミたっぷりに演じ、新境地を開拓している。
そんな芸達者な俳優たちが本作で見せる生き生きとした演技は、『ギルバート・グレイプ』『ショコラ』といった人間ドラマに定評のあるハルストレム監督の面目躍如。彼が俳優を演出する上における哲学は「俳優がリラックスして演じられる場を作ること」なのだとか。さらに「即興など自由に演じられる雰囲気や時間を俳優にたっぷりと与えること。わたしは撮影のカオスに没入するのが好きで、そこからクリエイティブなものが出てくると思っているよ」と付け加えた。
「それができるのも編集時に何が必要かよくわかっているからだ」と切り出したハルストレム監督は「それと彼らの演技を見ながら、自分だったらこうすると全部頭の中で演じているんだ。役者になりたいのになれないフラストレーションみたいな感じだけどね(笑)。そういうふうに頭の中で演じたイメージを実際の演出に生かすこともある」と、演出術を明かす。
これまで、ジュリエット・ビノシュ、ジュディ・デンチ、マイケル・ケイン、レオナルド・ディカプリオといったそうそうたる顔ぶれが、ハルストレム監督の作品を通じてアカデミー賞にノミネートされた。中でもマイケル・ケインは、『サイダーハウス・ルール』でアカデミー賞助演男優賞を獲得している。俳優たちからオスカー級の演技を引き出し続けるハルストレム監督の演出手腕を、最新作『砂漠でサーモン・フィッシング』で確かめてほしい。(取材・文:壬生智裕)
映画『砂漠でサーモン・フィッシング』は12月8日より丸の内ピカデリーほかにて公開