どこまでも多才な男、イーストウッド!俳優としての名作と共にその魅力を再検証!
『許されざる者』『ミリオンダラー・ベイビー』で2度のオスカーに輝き、監督としても俳優としても確固たる地位を築いているクリント・イーストウッド。『人生の特等席』で4年ぶりに俳優復帰を果たす彼の俳優としての名作を振り返ると共に、その多彩な魅力を改めて探ってみた。
『荒野の用心棒』や『ダーティハリー』で俳優として活躍する一方、1971年の『恐怖のメロディ』で監督デビューして以来、監督業も積極的に行ってきたイーストウッド。なかなか賞には縁のなかった彼だが、1992年の『許されざる者』では悲願のアカデミー賞作品賞・監督賞を獲得することとなる。このとき惜しくも受賞は逃したものの、俳優として主演男優賞にもノミネートされていた。2004年の『ミリオンダラー・ベイビー』でも同様、作品賞・監督賞を受賞すると同時に主演男優賞にもノミネートされるなど、監督・俳優どちらとしても高く評価されている。
俳優として彼がすごいのは、どのジャンルを演じさせても様になるところ。ドル箱3部作と呼ばれる『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』で西部劇のスターとしてブレイクしたかと思えば、最大の当たり役『ダーティハリー』のハリー・キャラハン役ではアクションスターとしての地位を確立。また、イーストウッド作品としては珍しい恋愛映画『マディソン郡の橋』では、いつも寡黙でしかめっ面な彼が満面の笑みを見せ、農家の主婦と恋に落ちる孤独な写真家を繊細に演じてみせる。『グラン・トリノ』の口は悪いがどこか憎めない頑固オヤジっぷりもハマっていた。
さらに、彼の才能はそれだけにとどまらない。『ザ・シークレット・サービス』では「若いもんには負けてられん!」と言わんばかりに体を張ったアクションを見せたほか、意外なピアノの腕前を披露している。実は音楽家としての顔を持つイーストウッドは『ミスティック・リバー』『ミリオンダラー・ベイビー』など数多くの作品で自ら音楽を手掛け、ジョン・キューザック主演の『さよなら。いつかわかること』では音楽のみを提供した。
『グラン・トリノ』の後、実質的な俳優引退を宣言していた彼だが、4年ぶりに『人生の特等席』で俳優復帰を果たす。イーストウッドが演じるのは年老いたメジャーリーグのスカウトマンという役どころで、わだかまりを感じつつもスカウトに同行することになった娘との親子の絆を再認識するさまが描かれる。本作でも『グラン・トリノ』で見せた愛すべき頑固オヤジっぷりは健在で、『ザ・シークレット・サービス』のときのように若者に負けじと頑張る姿がなんともイーストウッドらしい。「もう積極的に役は探さない」なんて寂しいことを言わずに、これからも元気な姿をスクリーンで見せてほしい。(編集部・中山雄一朗)
『人生の特等席』は11月23日より全国公開