オスカー女優ヘレン・ミレンが明かすヒッチコックの妻アルマ・レヴィルとは?
映画『クィーン』でアカデミー賞主演女優賞を受賞したヘレン・ミレンが、ヒッチコックの妻役に挑戦した話題の新作『ヒッチコック(原題)/ Hitchcock』について、サーシャ・ガヴァシ監督と共に語った。
同作は、1960年に公開された名作『サイコ』の製作の舞台裏を、ヒッチコック監督と彼を支えた妻アルマ・レヴィル、そしてキャスト陣やスタッフ陣を通して描いた秀作。作家スティーヴン・レベロ原作「アルフレッド・ヒッチコック&ザ・メイキング・オブ・サイコ」を映画化し、監督は映画『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』のサーシャ・ガヴァシがメガホンを取っている。
まず、ヘレン・ミレンはアンソニー・ホプキンスとの共演について「この映画まで会ったことがなかったけれど、彼とは多少似ている要素があるわね。わたしたちは、これまで舞台と映画の両方をこなしてきたの。舞台のステージ上では、他の役者に依存しながら演じているけれど、映画では俳優とカメラとの間合い(距離感)が大事。だから、2人の俳優を撮影する長回しのシーンでもない限り、俳優同士で会話したり、シーンについて話し合ったりすることはほとんどないの。だから、いつもわたしは共演者が演じやすいような環境を作っているし、アンソニーとの共演の際もそうした環境が必要だと思ったわ。彼はかなりのメイクアップが施された状態で演技に挑戦していたから、わたしもできる限りのサポートを提供することになったの」と語るヘレンは、さらにアンソニーの演技について、彼は最小限の演技で、最大の効果を導き出していたと評価した。
ヘレン・ミレンが演じたヒッチコックの妻アルマ・レヴィルについて「あの映画『サイコ』に参加したほとんどの人がすでに亡くなっていて、当時のアルマのことを覚えている人は本当に少なかったの。ただ、彼女の身長はわずか150cmくらいしかなかった。だから、そんな小鳥のような女性アルマが、あの大男ヒッチコックを唯一コントロールできた人物だという事実には感心したわ。でも背が低くないわたしは、あえてアルマがヒッチコックをコントロールしている演技アプローチは取らず、アルマの娘が執筆したアルマ・レヴィルの伝記本を参考にしたの。アルマの娘は、影のような存在として扱われる母親を、表舞台に出して人々から評価してもらいたかったと思うの」と話してくれた通り、この映画ではアルマが中心的人物として描かれている。
撮影中に、『サイコ』のオリジナル脚本のスーパーバイザーであるマーシャル・シュロムがセットを訪れたそうだ。「彼は現在84歳で、参加した『サイコ』は、彼の2作目の映画作品だった。彼は『サイコ』の撮影中毎日ヒッチコックと過ごし、ポストプロダクションまで一緒だったんだ。そんな彼が僕らのセットを訪れて撮影を見たときに、『君たちは、僕の記憶を取り戻してくれた』と言ってくれたんだ」とサーシャ・ガヴァシ監督は語り、さらにマーシャル・シュロムは鑑賞した今作について、ヒッチコックのスピリッツが映画に含まれていて素晴らしい映画だと評価したことも明かした。
映画は、ヒッチコックの内面と映画へのこだわり、さらに妻アルマがいかにヒッチコック作品に影響を与えていたかを垣間見ることができる作品に仕上がっている。同作の主演で、アンソニー・ホプキンスはアカデミー賞主演男優賞候補として評価されている。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)