オスカー有力候補『ゼロ・ダーク・サーティ』、実在ヒロインの厳しい実情
第85回アカデミー賞
アカデミー賞レースで快走中の話題作『ゼロ・ダーク・サーティ』のモデルとなった実在のCIA(アメリカ中央情報局)女性諜報(ちょうほう)部員が、映画のようなハッピーエンドを迎えておらず、メダルを授与されたものの昇進すらさせてもらえず、現在も冷遇続きであると報道され物議を醸し出している。
同作は、911全米同時多発テロの首謀者ウサマ・ビンラディンの殺害計画を題材としたサスペンス作品。NBCネットワーク朝の人気ニュース番組「TODAY」が報じたところによると、現役捜査官として極秘任務にあたっている匿名女性捜査官(映画の主人公マヤ)は、911の前にCIAに入局。オバマ政権開始後に活発化したビンラディン捜査に精力的に取り組んでいたという。
彼女は捜査初期よりアルカイダとビンラディンの直接交流説に重きをおいて執拗(しつよう)な捜査を行ったといわれ、その不屈の精神が功を奏しビンラディン殺害へつながったと報じられている。その際立った功績から、“マヤ”は非常にまれな栄誉ある勲功メダルを授与され局内で脚光を浴びることとなったが、映画のような華やかさはここまで。
この後、実在の“マヤ”には同僚からのジェラシーと局内独特の風潮である男尊女卑の報讐(ほうしゅう)が待っていたという。女性には何かと風当たりの強い男社会のCIAで彼女は嫉妬の的となり、男性局員であれば自動的だったといわれた昇進もことごとく見送られ、それに伴い年俸1万6,000ドル(約128万円 1ドル80円計算)アップもことごとくNGになったという。
これらの情報はすべてが『ゼロ・ダーク・サーティ』の関係者やジャーナリストたちが秘密の情報源から集積した情報で、CIA当局は“マヤ”に関しての公言を一切避けている。実在の“マヤ”への冷遇の陰には彼女の激しい気質や同僚に対するあからさまなライバル意識など、諸事情あるようだが、やはりお役所関係はどこの国でも内部確執が多いようである。(文・ロス取材:明美・トスト / Akemi Tosto)