『レ・ミゼラブル』の映画化は成功したのか?ミュージカル映画の賛否に迫る!
名作ミュージカルを映画化した『レ・ミゼラブル』の公開を期に、ミュージカルの映画化作品の賛否に迫った。
昨今、再びブームとなっているミュージカル映画。しかし、それは1960年代後半から約30年間も表舞台から姿を消していたジャンルだった。その流れを変えたのは、一つには『美女と野獣』をはじめとしたディズニーのアニメーション映画、そしてもう一つには、2003年に全米公開された映画『シカゴ』が挙げられるという。
「ミュージカル」が万人に受け入れられない一因には、突然歌い出すことによる「非現実感」がある。『シカゴ』は、歌唱シーンをすべて主人公ロキシーの妄想として描いたことで、この「非現実感」にうまい「言い訳」を付けた作品でもあった。現実世界と空想世界をはっきりと区別した『シカゴ』の世界観は、映画批評家たちにも好評を得、アカデミー賞で6冠を獲得。ミュージカル映画ブームの再来を呼び込んだ。
そうして制作されたミュージカル映画は、『RENT/レント』『ドリームガールズ』『ヘアスプレー』『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』『マンマ・ミーア!』『NINE』『ロック・オブ・エイジズ』と多数。中でも、歌唱シーンに「言い訳」を付けた『ドリームガールズ』『ヘアスプレー』は、ミュージカルファンにも好評で、映画化にあたって歌唱シーンに「言い訳」を付けることが成功したミュージカル映画の一つのテクニックになっていることがわかる。
しかし、21日に公開された『レ・ミゼラブル』はというと、歌唱シーンにまったく「言い訳」を付けていない作品だ。1本のパンを盗んだ罪で19年間も監獄生活を送っていた主人公ジャン・バルジャンほか、数奇な運命に翻弄(ほんろう)された多数のキャラクターたちの人生が、めまぐるしく描かれていく本作を映画化するにあたって、いちいち歌唱シーンに「言い訳」を付けることが不可能だったことは、容易に想像できる。
その代わり、『レ・ミゼラブル』は、ミュージカル映画では事前に歌を収録しそれに口を合わせて演技をするのが主流となっている中、あえてキャストたちが演じながら歌った生の歌声にこだわった。それにより、一曲一曲に、名作ミュージカルの映画化に懸けたスタッフ、キャストの魂が感じられる作品に仕上がった。ミュージカルが好きな人にも嫌いな人にも、本作では、そんな名作の息吹を、感じてほしい。(編集部・島村幸恵)
映画『レ・ミゼラブル』は全国公開中