妻夫木聡の結婚願望が増した『東京家族』 家族の絆を再認識
妻夫木聡が、山田洋次監督が巨匠・小津安二郎にオマージュをささげて制作した映画『東京家族』に出演し、結婚願望が増したことを明かした。
山田監督にとって、小津安二郎監督は、松竹の大先輩。小津監督が1953年に発表した世界的な傑作『東京物語』をモチーフとした『東京家族』は、「田舎から遠路はるばる上京してきた年老いた両親と、共に数日間を過ごすことになる平山家の子どもたち……」という基本的なストーリーはそのままに、山田監督独自のアレンジを加え、『東京物語』を、3.11の震災以降の今を生きる「家族の物語」に再構築した作品に仕上がっている。
妻夫木が扮(ふん)するのは平山家の次男・昌次。その恋人・紀子役は蒼井優が務めた。山田組初参加の妻夫木は、完成作を観て、「結婚もいいもんだなあ」と感じたそう。「恋人を両親に紹介し、その本質的な人間性をわかってもらえ、絆が生まれる瞬間に深く感動できた。本当の意味での親孝行ってこういうことなのかも」と語った。
かたや2010年に公開された映画『おとうと』以来の山田組となった蒼井は、「紀子の存在で、平山家の絆が強まるエピソードは素晴らしかった」と同調しつつ、「わたしはそこまで『結婚っていいな』とは思わなかったなあ」とつぶやき、対する妻夫木を「ごめん、飲み屋トークみたいな、ちょっとリアルな話になっちゃったね(笑)」と少々恐縮させていた。
『東京物語』で名女優・原節子の演じた役柄が、本作では妻夫木と蒼井のキャラクター両方にうまく落とし込まれ、継承されている。いわば二人は、山田監督から現代の日本に宿る「希望」を託された形。重責を果たした二人は、「実家に帰って『ただいま』と言うときのような、ホっとする気持ちになれる映画」(妻夫木)。「今の日本人って、こうなんですって、海外の方々にもぜひ観ていただきたい作品」(蒼井)と、それぞれの言葉で『東京家族』への愛着を表していた。半世紀の間、その時代、そして時代ごとの「家族」と向き合ってきた山田洋次の集大成とも言える感動作。たくさんの観客に届いてほしい。(取材・文:轟夕起夫)
映画『東京家族』は1月19日より全国公開