崔洋一監督、大島監督の死に涙こらえきれず「戦い抜いた映画監督」
21日、築地本願寺にて15日に80歳で死去した大島渚監督の通夜が営まれ、葬儀委員長を務めた崔洋一監督をはじめ、弔問に訪れた篠田正浩監督、武田真治らが、大島監督について改めて語った。
映画『愛のコリーダ』で助監督を務め、大島組の一員でもある崔監督は、「人には優しい方ですが、仕事には厳しい方でした」とその人柄を振り返る。「わたくしにとっては偉大な存在で、最後の最後まで戦い抜いた映画監督だと思います。すごい大きな存在であって、(その死を)時間を掛けてかみしめていきたい」と語ると、涙をこらえきれずにおえつを漏らした。
さらに、「あまりよろしい言葉ではないですが『愛のコリーダ』(のスタッフ)は名実共に狂信集団で、その頭目が大島であった」と切り出した崔監督。「大島組は伝統的にスタッフも必ずしもベテランではなく、才能のある若者であれば素人でもかまわないというお考えでした。『愛のコリーダ』もそうで、一兵卒にいたるまで、才能があるというのが大島組の厳しいおきて。それを歴代の助監督は伝承してきたと思います」と明かした。
また、明日の葬儀で弔辞を読む篠田正浩監督は、長年の友について「気性が激しい、冷酷なほどのリアリスト」と形容。「芸術を直視、分解・批評してみせ、自分たちはそれとどう向き合っているのかを、実に冷静に自分の内部で作り上げた。彼の思考回路はわたくしの優れた友人の中でもずば抜けていた。リアリストでありながら芸術家らしい奔放(ほんぽう)な激情家で、このふたつの矛盾するものをひとつの肉体に収めていた」と大島監督を称えた。
一方、『御法度』に出演した武田真治は、俳優の立場から監督を「勇ましい方」と感じたという。「現場でスタッフに指示をしても相談する姿を見たことがない。(『御法度』の)初日でも、(同性愛を扱った作品のため)登壇したみんなが不安を抱える中、大島監督は先陣を切って『今日、初日の初回をご覧になった方はとても幸せです』とあいさつして、みんなの気持ちをほぐしてくれました。自分のやりたい作品を作り、スキャンダルや議論になっても気にしない方でした」と監督の気骨ある人柄を振り返っていた。(取材・文:中村好伸)