村上隆、オリジナル企画で映画界に布石 初監督作品公開前に続編を作る意義
現代美術家・村上隆が「映画を作るために表現活動を行ってきた」と断言する目標を実現させ、初監督にして、実写とCGを融合させたオリジナル作品『めめめのくらげ』を作り上げた。同作の劇場公開を待たずしてシリーズ2作目以降を制作する意義や初挑戦の苦労を、村上監督が語った。
『めめめのくらげ』は、震災で父を亡くした小学生の正志(末岡拓人)が母(鶴田真由)と共に引っ越した先で出会った、子どもにしか見えない謎の生物“ふれんど”のくらげ坊との絆や友情を描いたファンタジー。クリーチャーの生き生きした動きを表現するため、目の動きだけに4時間、CGワンカットに3か月かけるこだわりようで、現在6割が完成に至っている。
「撮り始めた当初は、撮影現場で自分のテンションや気持ちの持っていきどころがなかったんですよね」と意外な言葉を口にした村上監督は、「映画撮影の『てにをは』を知らないので、演技指導や撮影部隊の人心掌握など、何もできずに、ぼーっとしていました。ただ、ポストプロダクションの後半になってきて、やっと自分の作品になってきたなという気がしてきました。撮影の最初にもっと完成のビジョンがわからないと、という基本的な部分の欠落を感じはしましたが」と初挑戦の難しさを明かす。
それでも「本当に映画を作りたい」という願望から100パーセント自身の会社で出資・制作している同シリーズ。初監督にして、第1作の公開前に2作目以降の撮影・企画を進行していることに驚くが、アーティストデビューをしてから、評価を得るまでに時間がかかったという自身のキャリアと照らし合わせ「自転車操業で今日の飯を食うお金を稼ぎつつ、未来に布石を打つことをやり続けてきたので、映画界もそうなのかなと思って」と意外にも肩の力が抜けている村上監督。
「僕の映画制作に対する本気度を認知してもらうことや、スタッフの意思統括のためにも2作目を早く作らなきゃと思ったんです」とシリーズ化の意義を明かし、「長編映画を作ると言い続けて十数年。結局作れずにいておおかみ少年になりかかっていたし、第1作を完成させてから2作目に入るのでは遅い。今企画している3作目も来年頭には撮り始めたいですね」と未来を見据えている。
大好きだと公言する宮崎駿監督の「自分自身が構想した世界を突破し、ラストに向かって自分を乗り越えようとする制作姿勢」に多くを学んでいるという村上監督が、映画『ロード・オブ・ザ・リング』レベルのクオリティーを標榜(ひょうぼう)した本作。初監督とは思えない出来栄えで映画界に衝撃を与えそうだ。(編集部・小松芙未)
映画『めめめのくらげ』は4月26日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国公開