『ジョイ・ラック・クラブ』の製作総指揮を務めたジャネット・ヤンが語る、払拭したい中国のイメージとは?
映画『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』、『ラストスタンド』に出演した注目のアジア系アメリカ人俳優ダニエル・ヘニーが主役を演じた新作『シャンハイ・コーリング(原題) / Shanghai Calling』について、プロデューサーのジャネット・ヤンとダニエル・シャー監督が語った。
同作は、ニューヨークでやり手の弁護士サムは、中国系アメリカ人であったために、ある日上司から上海転勤を言い渡される。ところが、中国語を話せないサムは、着いてまもなく携帯電話のビジネス契約に失敗してしまう。だが、友人や恋人の支えと、慣れない中国文化を学びながら逆境を乗り越えていくというコメディー調のドラマ作品。監督は、テレビ脚本家としても活躍するダニエル・シャーがメガホンを取り、製作は映画『ジョイ・ラック・クラブ』、『ラリー・フリント』のジャネット・ヤンが務めている。
上海が舞台であることについてダニエル監督は「中国では、上海の街を美しい女性とよく比較するんだ。もちろん、それぞれの解釈は違っていて、ある人は上海は美しい街で、まるで女性のように美しく変化を遂げていくと思っている人や、それとは別に上海の街は、女性のように世界中の人々を誘惑していると考えている人もいて、解釈は様々だ。さらに上海は、現在、常に新築のビルが建てられていて、近年ほぼ同じ建物のニューヨークとはだいぶ違うんだ」と語る通り、新築の建物に引っ越すと、上下のフロアーで工事が行われているという、現在の上海の建築事情も映画内に盛り込まれている。
ハリウッドで注目を集めているアジア系アメリカ人俳優ダニエル・ヘニーについてダニエル監督は「僕は、今作のようなコメディー作品に彼が参加しているのをこれまで観たことがなくて、そんなイメージのない彼が笑わせてくれるのが(今作の)面白いところなんだ。彼のコメディーのタイミングはプロとして素晴らしかったよ!」と評価し、一方ジャネットは「今作に製作費を投資した人々は、もっと中国で知名度のある俳優をキャスティングすべきではないかと指示してきたけれど、一度彼らをダニエルに会わせてみると、すぐに彼らも我々の選択に同意してくれたわ(笑)」と語った。
中国の文化をアメリカにもたらす意義についてジャネットは「ダニエル監督とわたしは、ここアメリカで中国系アメリカ人として育ったことで、アメリカでは中国のイメージが欠落していることは事実だと思っている。我々の文化が大衆の社会と一致しているとは思えないから。それに、アメリカ映画ではよく典型的な中国人が描かれてきた。そのうえ、近年のアメリカでの中国の情報は、(政府による)ネガティブな情報ばかりで、リアルで人間的な感知で捉えられることは少ないわ。そのため、近年の中国の経済的な発展だけでなく、真の中国の環境をこの映画で観てほしいと思っている」と明かした。
映画は、典型的なアメリカの価値観で中国を観ていた男が、最新の技術を取り入れながらも、伝統を重んじ成長していく上海の街や人々に惹(ひ)かれていく過程が興味深く描かれている。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)