ロバート・ゼメキス、12年ぶり実写映画『フライト』で見せるゼメキス流映画
映画『フライト』で、12年ぶりに実写映画を手掛けたロバート・ゼメキス監督が、その理由を自身の映画観を交えて語った。
トム・ハンクス主演の『キャスト・アウェイ』以降実写から離れ、『ポーラー・エクスプレス』『ベオウルフ/呪われし勇者』などの3DCG映画に取り組んできたゼメキス監督は、その理由を「デジタルシネマに恋してしまった」と表現。一方、12年ぶりの実写撮影について、「自転車に乗るのと同じで、忘れることはないからね。何も問題なかったよ」と笑いながら語った。
「デジタルシネマは、演技と技術的な部分を分け、後でいろいろなものを加えることができる。全てをコントロールできるところに、可能性を感じた。この手法を使うと、アニメーションと実写の中間のまるでグラフィックノベルのようなものを作ることができるんだ」と3DCG映画の魅力を熱弁するゼメキス監督。しかし、この手法に取り組んだきっかけはそれだけではない。「当時、実写映画で撮りたいと思う、良い脚本に巡り合えなかった」と多くの監督が抱えるである悩みを、監督もまた持っていたというのだ。
そして、再び実写に戻った理由も脚本。「『フライト』の脚本は非常にユニークだった。デンゼル・ワシントン演じる主人公のキャラクターが非常に複雑で、その伝え方も従来の映画と違う。しかも、登場人物それぞれが欠点やグレーな部分を抱えている。そこに強く惹(ひ)かれたんだ。わたしももちろん完璧ではないし、グレーな部分を持っているからね」というゼメキス監督は、本作を通して最も伝えたかった「生きている限り、希望はある」というメッセージのため、生身の俳優であるデンゼルと「主人公がなぜこのような人間になったのか」について時間をかけて話し合い、それが監督自身も驚いたという、彼の演技につながったという。
その上でゼメキス監督は、「『レンズを通して撮ったものが映画だ』と言う人もいるけど、わたしにとっては、そこにキャラクターがいて、音があって、カラーがあって、観客の前で上映されるものであれば映画。実写もデジタルシネマも区別はないんだよ」と断言。本作を観れば、再びその手腕を振るって実写映画を撮ってほしいと多くの観客が望むように思うが、それには、本作のようにゼメキス監督の心に響く脚本が書かれるのを待つ必要がありそうだ。(写真・文:小島弥央)
映画『フライト』は全国公開中