『マトリックス』ウォシャウスキー姉弟、最新作はナタリー・ポートマンが製作のきっかけ
『マトリックス』シリーズの監督として知られるラナ&アンディ・ウォシャウスキー姉弟が、最新作『クラウド アトラス』のプロモーションで共同監督のトム・ティクヴァと共にインタビューに応じ、製作のきっかけがナタリー・ポートマンだったことを明かした。
映像化不可能ともいわれたデイヴィッド・ミッチェルの原作小説を最初に気に入ったのは、かつてウォシャウスキー姉弟の監督作『Vフォー・ヴェンデッタ』でヒロインを務めたナタリー・ポートマンだったという。「わたしに原作を読むことを勧めてくれたのがナタリーなの。だから彼女はこの映画の母親のようなものね」(ラナ)、「(この映画の)ドミノを最初に押したのはナタリーだよ」(アンディ)と映画化に至ったことを明かした。
最初の人生は悪人で始まるものの、各時代でさまざまな経験を経て、ついには世界を救うまで魂が成長する主人公の男を演じたのはトム・ハンクス。ティクヴァ監督は「企画当初からトムはこの作品に非常に興味を持っていた」と述懐。そして「1本の映画で6役をやるのはワクワクすると同時に、大きな勇気も必要だったと思う。トムはキャラクターがだんだん進化していくさまを、表情で見事に表現していたね」とその演技を称賛した。
劇中では登場人物が互いの人生に影響を及ぼしていくが、中でも誰かが行った善行が、周囲の人間や次の時代にポジティブな影響を与えていくさまは感動的だ。ラナは「優しさと勇気を持つこと、自分より他者のことを思って行動することが、われわれ人類が進化するために必要だという思いが入っているの」、アンディは「アメリカ人は個人主義であまり他人と関わろうとしないところがあるけれど、それは現実と反する。歴史のつながりがあるから今自分がここにいるという自覚、僕たちの後に続く人たちのことも考えるべきだというメッセージを伝えたい」とそれぞれ本作に込めた思いを語った。
2003年の『マトリックス レボリューションズ』以来10年ぶりの来日となるウォシャウスキー姉弟。ラナは「東日本大震災が起こったときは、本当に胸が痛んだ。日本は島国で何度も災害に襲われてサバイバルしてきたので、ある意味、竹のような性質を持っている国だと思う。ほかの国で起こったらポキっと折れてしまいそうな出来事でも、日本はしなやかに曲がって跳ね返すの。今日本は復興しながら、生き生きと跳ね返っているように見えるわ」と現在の日本の印象を好意的に語る。日本の文化をこよなく愛する彼らの熱いメッセージが込められた本作を、ぜひチェックしてみてほしい。(古川祐子)
映画『クラウド アトラス』は公開中