罪のない少女が身体検査される…なぜ?衝撃の問題作が日本公開決定
アメリカのマクドナルドで店員が裸にされ、身体検査を受けるという実際にあった出来事を基にした映画『コンプライアンス 服従の心理』が6月29日より日本公開されることが決定した。最終的には訴訟に持ち込まれ、マクドナルド側が6億円相当の賠償金を支払ったことでも知られる同事件を通して、人間の心理を描いた問題作だ。
同作の基になっているのは、2004年にアメリカ・ケンタッキー州のマクドナルドで起きた事件。警察官を名乗る男からの電話をきっかけに、窃盗のぬれぎぬを着せられた店員の少女が身体検査の名目で裸にされ、性的行為を強要される……クレイグ・ゾベル監督はこの事件の根底にある人間心理に光を当て、見事に映画作品として成立させた。
そんな本作を理論的に支えているのは、社会心理学者スタンレー・ミルグラム博士の研究、通称「ミルグラム実験」だ。同実験で実証された「組織に属する人は、その組織の命令とあらば、通常では考えられないほど残酷なことでもやってしまう」という人間心理になぞらえながら、徐々にエスカレートしていく身体検査、そして店員の少女が味わう悪夢を描き出しており、そこで起こっていることが決してひとごとではないことを観客は知るはずだ。
サンダンス映画祭を皮切りに世界各地の映画祭で上映された本作はそのショッキングな題材もあり、大きな話題に。昨年末には、身体検査を命じる店のマネージャーを演じたアン・ダウドがナショナル・ボード・オブ・レビュー賞の助演女優賞を受賞、インディペンデント・スピリット賞、放送映画批評家協会賞にノミネートされるという快挙を達成した。
身体検査を行ったマネージャーは果たして加害者だったのか、それとも被害者だったのか? 見終わった後も心の中でそんな疑問がふつふつと湧き上がる本作は、大作では味わえない、まさにインディペンデント映画ならではの魅力が詰まった作品となっている。(編集部・福田麗)
映画『コンプライアンス 服従の心理』は6月29日より新宿シネマカリテほかにて全国順次公開