ペドロ・アルモドバルも絶賛、ゴヤ賞10部門受賞した話題のサイレント映画とは?
スペインのアカデミー賞こと、ゴヤ賞で作品賞、脚本賞を含む10部門のカテゴリーを受賞した話題のサイレント映画『ブランカニエベス(原題)/ Blancanieves』について、パブロ・ベルヘール監督が語った。
同作は、1920年代のスペインで、マタドールの父親が闘牛の角に刺されて下半身まひの状態となり、ショックを受けた妊娠中の母親は娘を生んで亡くなってしまった。そんな両親を持つ娘カルメンチータは、祖母に一時期預けられるが、祖母までも心臓発作で亡くなってしまい、再婚した父親と継母のもとで暮らし始める。そこで、彼女は徐々にマタドールの才能を開花させていくというサイレント作品。グリム童話「白雪姫」の要素が含まれている。
サイレント映画を製作する気になったのは「僕が最も好きな映画は、1920年代のサイレント映画なんだ。その時代には特に素晴らしいサイレント映画が製作されていた。アベル・ガンス監督の『ナポレオン』や、ヴィクトル・シェストレムの『霊魂の不滅』などのサイレント映画の傑作も、その時代に製作されたんだ。そんな映画を観ていたために、ビジュアル的にどういうものを描いたら良いか念頭にあった。ニューヨーク大学の映画学科で学んでいたときも、サイレントの短編を製作し、ニューヨーク・フィルム・アカデミーで生徒に教えていたときも、サイレント映画を教えていた」と、サイレント映画の製作は自然な流れだったようだ。
カルメンチータを演じた子役ソフィア・オリアについて「このカルメンチータ役には、マジカルな要素を持った、特に目が魅力的な子どもを探していた。それは、映画『ミツバチのささやき』のアナ・トレントのような子役だった。だから、キャスティング・ディレクターには、このアナのような女の子を探してくれと頼んでいたんだ。実際には、マドリード、バルセロナ、セビリアなどの都市を7人のチームに分けて、およそ1,000人くらいの子役を見たが決められなかった。結局僕の友人によって、このソフィアを紹介してもらったんだ。彼女は今まで映画出演したことがなかったが、(カメラテストでは)まばたきもしないほど集中していたのには驚かされた」と明かした。
女闘牛士を演じたマカレナ・ガルシアは「毎日約4~5時間、およそ1か月もの間、実際の闘牛士のもとでトレーニングしたんだ。実は子役のソフィアも参加していたんだよ(もちろん、マカレナの方はより厳しいトレーニングをしていた)」と語り、さらに「白雪姫」の要素が映画内に入っていることについては「『白雪姫』の映画化はしたくなかったが、あの童話に出てくるキャラクターの要素を、この映画に当てはめている。さらに映画自体には、『赤ずきん』、『眠れる森の美女』などの要素もある」と話した。
映画は、アカデミー賞を受賞した『アーティスト』のような演出にわざとらしさがなく、ごく自然にサイレント映画を楽しめる作品になっている。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)