寺島進の原点!初主演作にして未DVD化の映画『おかえり』がリバイバル上映
1996年に劇場公開された映画『おかえり』がリバイバル上映を果たし、本作が初主演作となった寺島進、そして同じく本作が映画監督デビューとなった篠崎誠監督が16日、オーディトリウム渋谷でトークショーを行った。
現在公開中の篠崎監督の最新作『あれから』が、とあるカップルの葛藤を経た愛の物語であることから、同作に近い世界観を持つ本作のリバイバル上映が決定。DVD化もされていない本作の上映は貴重な機会であり、上映後に登場した寺島は「本当にいい映画だよね。俺の肌もツルツルしているし、金は盗まれてないしさ」と置き引き被害にあったことを踏まえた自虐的なコメントであいさつ。一方の篠崎監督は「初めて会った寺島進はもちろんアニキ的なところもあるんだけど、すごく繊細で、まつ毛が女みたいに長かった」と述懐し、「病院で自分の奥さんを見つめているシーンでその長いまつ毛を撮りたかった」と懐かしそうな表情を見せた。
クランクイン前は脚本を前に何度も意見交換をしていたという二人。しかし初タッグということもあり、互いに煮詰まることも多く、寺島から「このままじゃ良くない。仕切り直した方がいいんじゃないか」と切り出されるなど、企画消滅の危機もあったという。
それでも机上の空論で互いに疑心暗鬼になるよりも、「とにかくリハーサルをしよう」ということになり、そこで行われたのが、精神のバランスを崩して泣き崩れる妻を、寺島が優しく抱きかかえるという、本作の一番のハイライトとなるシーンだった。「それがしあわせな風景でね。紙に書いた登場人物がようやく見えた気がした」という篠崎監督。
映画を良くするためにスタッフ、キャストたちが知恵を出し合い、そしてがむしゃらに作り上げた。「ひたむきだったよね。これは俺の原点。忘れちゃいけないと思うよ」としみじみコメントする寺島に、篠崎監督も「本当に映画っていいかげんなことはやれないと思う。ちょっとでも気を抜くと負けちゃうんだよね」と同意。その甲斐あって本作は、自主制作ながら異例のロングラン上映を果たし、海外映画祭でも高い評価を受けた。「社交辞令でなく、またタッグを組みたいね」と語る篠崎監督に、寺島も「もう一回はやれる。気力体力が充実しているうちにやらないと」と力強くうなずいた。(取材・文:壬生智裕)
映画『おかえり』はオーディトリウム渋谷で公開中
映画『あれから』は吉祥寺バウスシアターほかにて公開中