ジム・スタージェスが明かす重力が隔てた究極のラブロマンス作品とは?
映画『アクロス・ザ・ユニバース』のジム・スタージェスが、新作『アップサイドダウン 重力の恋人』について、フアン・ソラナス監督と共に語った。
ジム・スタージェス出演 映画『クラウド アトラス』写真ギャラリー
同作は、上下に分かれた惑星の下の惑星に住むアダム(ジム・スタージェス)は、接触が禁じられている上の惑星に住むエデン(キルステン・ダンスト)と隠れて交流を深めるが、一緒に居ることが惑星の管理当局に見つかり、二度と彼女に会えない環境にさせられる。だが10年後、まだエデンに思いを寄せるアダムは、2つの惑星をつなぐトランスワールド社に入社し、エデンとの再会を果たそうとするが、そこには数々の試練が待ち受けていたというSFロマンス作品。監督は、アルゼンチンの有名監督フェルナンド・E・ソラナスの息子、フアン・ソラナスがメガホンを取っている。
興味深いのは、惑星の重力の違いだけでなく、格差社会もアダムとエデンの恋を阻んでいる点だ。「アダムは下層階級出身で、エデンは上流階級出身なんだ。実はこのアイデアは、1977年にアルゼンチンを統治した軍事政権が国家的なテロを起こし、そのために身の危険を感じた僕ら家族はフランスに逃がれたことがあった。(当時)発展途上の段階にあったアルゼンチンと、優雅に暮らしていたフランスは対照的で、それがこの映画で格差社会として生かされているが、政治的な階級の差や自由の差は、観客個人で判断を下してほしい」とフアン監督は語った。
出演経緯についてジムは「この作品に出演する前に、映画『ウェイバック -脱出6500km-』で過酷な土地を歩いて撮影をしたために、それとは全く逆の作品を探していた。そんなときにこのフアンの脚本を渡された。内容はかなり不思議でクレイジーだったが、興味深いとも思ったんだ。もっとも、彼がどのような作品を作りたいのか、当初はイマイチ理解できなかったが、彼がこの映画のアイデアとなったグラフィック・デザインを載せた書物を送ってくれて、具体的なことが理解できた。さらに、CGがまるで絵画のように施されている世界観を観て、そんな夢のような世界に足を踏み入れたいと思ったことがきっかけだ」と明かした。
映画内には、『スパイダーマン』シリーズに出演したキルステン・ダンストとの、『スパイダーマン』をほうふつさせる空中キスシーンがある。ブロードウェイミュージカル「スパイダーマン」に関わる予定だったジムは「実際にはブロードウェイの『スパイダーマン』は、当時監督予定だったジュリー・テイモアとワークショップを行っただけで、プロダクション自体に関わることはなかった。ジュリーは僕の最初の作品『アクロス・ザ・ユニバース』の監督で、単なる友人としてあの場に居ただけなんだ。今回の映画のキスシーンは、約1か月前からワイヤーにぶらさがる練習をして、この映画の重力の設定に対応し、それからあのようなキスシーンをこなすことになった」と明かした。
映画は、SF要素とロミオとジュリエットのようなラブロマンスが交錯し、さらに格差社会によって隔てられた惑星の映像が見事に映し出され、娯楽性の高い作品に仕上がっている。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)