東北の人を助けたいと思うのに時間はかからなかった…ビルマ人青年の思い
30日、ドキュメンタリー映画『異国に生きる 日本の中のビルマ人』初日舞台あいさつがポレポレ東中野にて行われ、土井敏邦監督と出演者のチョウチョウソー氏が登壇した。
軍事政権下のビルマ(現ミャンマー)を離れ、家族を残したまま政治難民として日本に亡命し、自国の民主化運動を続けた青年(チョウチョウソー氏)を追った本作。母国に帰りたくても帰れない、何が一番大切なものなのかを迷いながら生きる14年間がフィルムに収められたことにチョウ氏は「(最初は)髪の毛が黒かったのに、最後の方は白くなっていますね」と感慨深げに語った。
土井監督は「元々は映画にするつもりではなかった」と述べたが「(撮影・編集に携わった)横井明広さんが撮ってきた被災地の映像によって映画にしようと思った」と振り返る。チョウ氏をはじめとした同じ境遇のビルマ人が、東日本大震災後、すぐに岩手県陸前高田市へボランティアとして向かったのだ。「日本人でさえためらう人が多い中、生活が大変だと思われるビルマ人がなぜ?」と土井監督は疑問に思ったという。
「僕らビルマ人にとっては普通の感覚。自分たちが住んでいる社会で起きた出来事。無視することはできません。仕事がないビルマ人もいましたが、自分たちよりも東北の人の方が困っているはずだから助けたいという気持ちになるのに時間はかかりませんでした」とチョウ氏。その背景には、政治難民として厳しい状況下に置かれている中、日本人が事情を理解して、助けてくれたという気持ちがあった。
「自分のためだけに生きるのは、つまらない」。この言葉が本作の本質となっている。「この映画でビルマ問題を描きたかったというわけではないんです。チョウさんたちを通じて、社会の中で、個人がどう生きるのか? 日本人がとかく見下しがちな外国人たちが、本当に劣っているんですか? 本当の豊かさとは何なのですか? ということを訴えたかったのです」と土井監督は作品に込めた思いを語った。(取材・文:磯部正和)
映画『異国に生きる 日本の中のビルマ人』はポレポレ東中野にて公開中