ノオミ・ラパス主演『チャイルドコール 呼声』劇場公開の裏に映画祭逆風への新たな挑戦
元祖ドラゴン・タトゥーの女ことスウェーデン女優ノオミ・ラパス主演『チャイルドコール 呼声』が公開された。配給・宣伝を手がけるのは、北欧映画祭トーキョーノーザンライツフェスティバルを企画・運営する映画会社スティクティングタマゴトーキョー。英断の背景には、映画祭を続けていくための戦略があった。
ノーザンライツは2011年スタート。映画会社アップリンク主催の配給ワークショップで出会ったメンバーが、日本であまり紹介されない北欧映画に焦点を絞って開催している。だが、フェスティバルディレクターの笠原貞徳さんは「映画祭がこんなにお金がかかるとは思ってなかった」と本音を明かす。
現在、毎日どこかで開催されている映画祭。だが、ノーザンライツのように日本配給が決まっていない新作を上映するとなると字幕作業や上映権料など、1作あたり約60万円以上の費用が必要となる。手間とお金を掛けた作品を映画祭のみで上映するのは惜しい。ならばと、キングレコードなどの協力を得て、自分たちの手で一般公開へと送り出すことに決めたという。
配給第1弾は、今年2月のノーザンライツで日本初上映された『ベイビーコール 呼声』と、同じポール・シュレットアウネ監督『隣人 ネクストドア』。前者は児童虐待、後者は恋人へのDVと社会問題をテーマにしたサイコ・スリラーだ。
笠原さんは「北欧映画は日本人の琴線に触れる内容が多い。確かに暗い作品が多いのですが、物語に深みがあります。また『ドライヴ』でブレイクしたデンマークのニコラス・ウィンディング・レフン監督らを輩出したように、完成度が高い作品が多い」とその魅力を語る。
今回の試みは一般公開で新たな北欧映画のファンを獲得し、今後のノーザンライツへの動員や運営費の獲得に繋げていきたいという野望もある。世界的な経済危機に伴い、老舗のロッテルダム国際映画祭でも今年は予算2割削減、カナダの新世代映画祭も今年7月に予定されていた第5回大会がキャンセルになった。映画祭への逆風が吹く中、新たな一歩を踏み出したノーザンライツの挑戦に注目したい。(取材・文:中山治美)
『チャイルドコール 呼声』は公開中、『隣人 ネクストドア』は同日レイトショー公開