震災後の選挙が浮き彫りにするニッポンとは?想田和弘監督『選挙2』の公開が決定!
台本作りやリサーチをせず、ナレーション、音楽、テロップを排した「観察映画」スタイルのドキュメンタリーで知られる、想田和弘監督の最新作『選挙2』が6月に劇場公開されることが決定した。
映画『選挙』といえば、想田監督初の長編ドキュメンタリー映画であり、「観察映画」シリーズの第1弾。政治の素人ながら、2005年に行われた川崎市議会議員補欠選挙に立候補することになった「山さん」こと山内和彦氏に密着。「電柱にもおじぎ」を合言葉に、過酷なドブ板選挙に挑む様子を「観察」する中で、日本の選挙の実態をあぶり出した。
当選した山内氏は、たった2年後の統一地方選挙で自民党の公認を得られず不出馬。政治から遠ざかり主夫となっていた。『選挙2』は、そんな彼が東日本大震災直後の2011年4月1日に告示され、実施が危ぶまれた統一地方選挙に出馬し、「脱原発」をスローガンに掲げて戦う姿を追った作品だ。
前作で徹底した組織的ドブ板選挙を戦った山内氏は、今回選挙カーに事務所、タスキ、握手まで封印。選挙の総予算は、ポスターとハガキの印刷代8万4,720円のみという、ないないづくしの選挙戦に挑む。映画『精神』『Peace ピース』『演劇1』『演劇2』を経て再び山内氏を追った想田監督も、基本的に街頭演説もない選挙戦に、当初「いったい何を撮れというのだ?」と思ったという。
それでも「観察映画」理論に基づいて回したカメラは、放射能の恐怖を前にして営まれる日本的日常や、変わらず繰り広げられるお馴染みの選挙風景を写し出す。編集を経て想田監督は、本作の捉えた選挙戦を「小さな市議会選挙に、震災後の『ニッポン』の限界と可能性を予見する要素が凝縮されていた」と語る。ないないづくし、まるで「観察映画」スタイルを思わせる山内氏の戦いから浮き彫りになる日本の姿は、観客の目にどのように写るのか、公開を楽しみにしたい。(編集部・入倉功一)
映画『選挙2』は6月 シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開