日本人が快挙!北米最古の映画祭で初受賞!ジョージ・ルーカス監督も輩出した伝統の映画祭
北米最古を誇る映画祭である第51回アナーバー映画祭で映画作家・牧野貴監督の短編『2012』が最優秀外国映画賞を受賞したことがわかった。同賞を日本人が受賞するのは初めて。牧野監督は昨年、オランダ・ロッテルダム国際映画祭でも日本人初となる短編部門最高賞を獲得しており、また一つ栄冠を得た。
『サイド・バイ・サイド:フィルムからデジタルシネマへ』写真ギャラリー
同映画祭は、米国ミシガン州で1963年から行われているインディペンデント&実験映画の祭典で、ジョージ・ルーカス監督らもここから巣立った若手の登竜門的存在。例年2,500作品以上の応募作の中から厳選された約180作が上映される。牧野監督はこれまで5回選出されているが、受賞は初めて。牧野監督は「もう受賞はないのかなとあきらめていただけに、かなりうれしいです」と声を弾ませた。
受賞作『2012』は上映の度に再編集し、ライブで音楽を付けるという変貌を遂げながら丸一年かけて進化させてきた実験映画。片目だけサングラスをかけて映像を見ると立体的に見えるプルヒリッヒ効果を応用し、3Dでも楽しめるという遊び心溢れた作品だ。だがその背景には、フィルムにこだわってきた牧野監督の、デジタル化への反発運動の意味も込められていたという。
牧野監督は「キアヌ・リーブスが『サイド・バイ・サイド:フィルムからデジタルシネマへ』でデジタル革命を検証していたように、いずれフィルムでは作れなくなるだろうと予測はしていました。だからこそ16ミリで撮り始めたら、製作途中、日本の現像所が続々と閉鎖される事態に。このままフィルムを使い続ければコストもかかることからデジタルに移行せざるを得ない状況になりましたね」と身を持って映画を取り巻く環境の変化を痛感したという。
牧野監督自身の生活も大きく変化した。ロッテルダム受賞以降、海外の映画祭などからオファーが殺到して多忙になったこともあり、ポストプロダクション会社「ヨコシネ」を退社。今年から職業・映画作家として国内外を飛び回っている。牧野監督は「ずっと日本で実験映画上映会[+]を続けてきたが海外にも活動が広がってきており、ようやく認知されてきたかな」と手応えを感じているようだ。(取材・文:中山治美)
映画『2012』は4月13日、14日に東京・渋谷アップリンク・ファクトリーで開催されるMakino Takashi Film Festival2013で日本初上映される。