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ウォン・カーウァイが「誰にも撮れない」と自負するカンフー映画を経て習得した武術の極意とは?

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気管支炎に骨折……キャストたちに過酷なトレーニングを課したというカーウァイ監督のオニ演出がさえわたる!
気管支炎に骨折……キャストたちに過酷なトレーニングを課したというカーウァイ監督のオニ演出がさえわたる!

 初の英語作品『マイ・ブルーベリー・ナイツ』以来、約6年ぶりの新作『グランド・マスター』を完成させたウォン・カーウァイ監督に直撃インタビューし、初の本格アクションとなる本作で習得した武術の心、そして壮絶な撮影の裏側が明かされた。

映画『グランド・マスター』写真ギャラリー

 ウォン・カーウァイが、カンフー映画? と驚いた人も多いはずだ。このプロジェクトに着手する際、彼自ら武術家に取材し、「(中国の)カンフーとは? カンフーはいかにすごいものなのか?」という疑問を解き明かすところから始まったという。そのかいあってか、雨や雪の中で繰り広げられる格闘技の流麗な映像美は圧巻。スローモーションや目にも留まらぬスピードを織り交ぜた超絶アクションをどのように生み出したのか、その秘けつを聞いたところ「誰にも撮れない映画を作りたかったから、参考にした作品はない。武術におけるさまざまな流派のリアルさを追求した」とあくまで独自のスタイルを自負している。

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 格闘シーンの完成度の高さは、各流派のグランド・マスターに弟子入りし、数年にわたって壮絶なトレーニングに臨んだトニー・レオンチャン・ツィイーらの努力のたまものでもある。中でも、監督のミューズ的存在であるトニー・レオンについては、「3年もかかり、撮影中に2度手を骨折してまで挑んでくれたんだ。彼の地位、年齢で、武術に関してはゼロからスタートしてマスターしてしまったんだから驚くよ」とトニーの役者魂に心底ほれ込んでいるようだ。

 役者にとことん高いハードルを突き付けることでも知られる監督だが、今回ブルース・リーの師匠としても有名なイップ・マンというカンフー・マスターを演じるトニーに告げたのは「前半はブルース・リーのように、後半は一人の歴史上の人物として演じてほしい」という風変わりな注文。というのも、イップ・マンが香港に出てくる前の、中国にいたころの人生に関する資料が乏しく、はっきりとわからなかったためだという。

 本作が「カーウァイ作品」たるゆえんは、劇中でイップ・マンが「(カンフーにおいて大事なのは)技ではなく心」と語っている通り、武術に生涯をささげる人々の「心」にフォーカスしているところにある。監督は「武術には生きることと死ぬこと、そして恨みが描かれている」と深遠なコメントを残すと同時に、「早朝の駅で60歳を超えた師匠が弟子たちと武術の稽古をしているのを見て、どうして彼らは朝早くから練習ができるんだろうとふと考えたときに、好きだということに尽きる、その精神はすごいものなんだと実感した」と語る。本作で武術の神髄を学び、さらなる「グランド・マスター」に進化した彼の入魂作を五感で体感してほしい。(取材・文:編集部 石井百合子)

映画『グランド・マスター』は5月31日よりTOHOシネマズ日劇ほかで全国公開

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