ウォルト・ディズニー、母親の事故死から…世界を夢に包んだテーマパークまで人生の足跡
スティーヴ・ジョブズの評伝本がベストセラーになったことは記憶に新しいが、彼と同じく世界中の人々に夢を与えた伝説の偉人ウォルト・ディズニーの評伝本が話題になっている。
この本がユニークなのは、ウォルトをよく知っていた身内だけでなく、ビジネスパーソンなどを含むさまざま人々がウォルトについて、その人柄を表す短いコメントのみで構成されているところ。
ある人にとっては気難しい上司、ある人にとってはこの上なくやさしい身内。ある人にとっては手の届かないあこがれの偉人。ある人にとっては気さくな友人。また、ウォルト自身が語る自身のポリシーも時には自信家、時には繊細な寂しがりやとウォルトの人としての側面があらゆる方向から表現され、書き手の主観のみで彼の人柄を結論付けられてはいない。
興味深いエピソードの一つに、ウォルトが母親に『白雪姫』のビジネス的成功によってプレゼントした邸宅で、ガス設備の不備によるガス中毒で亡くなってしまっていたというものがある。ただ、本書ではこの一件が彼の人生にいかなる影響を与えたかなどについての誘導や憶測がされていないため、読者はいろいろな人の発言の中からそれを想像することになる。
巨大テーマパークを作り出すクリエイティビティや世界恐慌やビジネスでの挫折など、ウォルトの想像力と不屈の精神がどう人を動かし、世の中がどう変化していったのか……想像を働かせながら読み進められるユニークな1冊になっている。(編集部・下村麻美)
「ウォルト・ディズニーの思い出」竹書房刊は発売中 エイミー・ブース・グリーン&ハワード・E・グリーン[著]阿部清美[訳]四六判・並製 352頁 定価:1,600円+税