被爆3世の女子大生を演じた北乃きい、役づくりの苦労を語る
女優の北乃きいが被爆3世の女子大生役で主演した映画『爆心 長崎の空』の完成披露試写会が14日に都内で行われ、北乃のほか、稲森いずみ、柳楽優弥、宮下順子、主題歌を担当した小柳ゆき、日向寺太郎監督が登壇した。
本作は、長崎原爆資料館館長を務め、「聖水」で芥川賞を受賞した青来有一の連作短編集「爆心」を、実写映画『火垂るの墓』の日向寺監督が映画化した感動作。キリスト教と深い関係がある被爆地・長崎を舞台に、母を亡くした少女(北乃)と娘を亡くした母親(稲森)が巡り合い、悲しみを共有しながら希望を見いだす姿を描く。
北乃は今回演じた被爆3世の女子大生・門田清水役について「清水自体、普段は被爆3世ということを気にしない、真っすぐで純粋な女の子。どこにでもいるような普通の大学生の女の子を演じられればと思ったけれど、今回改めて、普通を普通に演じることの難しさに気付かされました」と女優として学ぶことが多かった様子。完成作については「とても淡々としたお話だけど、そこがすごくリアル。ノンフィクションを観ているような感覚になりました」と感想を述べた。
一方、被爆の影響で妊娠に恐れを抱く女性・高森砂織を演じた稲森は「わたしが演じたのは、ある悲しい出来事が起きて、それを内に秘めて悩んで悩んで、渦の中に巻き込まれて落ちていくような役。そういう精神状態の人は、どういう日常を送るんだろう、どういうふうにほかの人と接するんだろう、とかそういうことをすごく考えながら、大切に演じたつもりです」と役づくりを振り返った。
また、北乃演じる清水に思いを寄せる廣瀬勇一役の柳楽は、本作に出演したことで「戦争によってできてしまった傷跡を、僕らの世代以降も忘れてはならないと改めて感じました」と言葉に力を込めた。そしてトーク後には、小柳が初めて映画のために詞を書き下ろしたという本作の主題歌「ひまわり」を情感たっぷりに歌い上げた。歌を聴き終えた北乃は「すごい……一瞬にして(主人公の)清水になりました!」と感激しきりだった。(古河優)
映画『爆心 長崎の空』は7月20日より東劇ほか全国公開