才能は遺伝する!?映画界を担う親子監督に注目!
カナダの鬼才デヴィッド・クローネンバーグの息子、ブランドン・クローネンバーグが映画『アンチヴァイラル』で長編映画デビューを飾るが、もの作りの遺伝子を受け継ぐ親子監督に注目してみた。
親子で活躍する監督は、フランシス・フォード・コッポラにソフィア・コッポラ、ケン・ローチにジム・ローチなど数多く存在する。その中でもインディーズにこだわった親子監督といえば、ジョン・カサヴェテスとニック・カサヴェテスだ。
ジョンは、当時のハリウッドには珍しく自主製作にこだわり、借金までして映画を撮っていた「インディーズ映画の父」だ。その結果『フェイシズ』『こわれゆく女』など数多くの名作を世に残している。
息子のニックは、『ジョンQ -最後の決断-』『きみに読む物語』など商業映画で成功するが、最近、久々のインディーズ映画『イエロー』を発表。父同様、借金をして映画製作に臨んだそうだが、第25回東京国際映画祭では、自身の映画作りについて「自分の頭の中にあることを、誰に何と言われようと思った通りにつくるのが良いと思う」と語っていたという。この言葉こそが、カサヴェテス親子を突き動かしたもの作りの信念なのだろう。
親子でもジャンルが異なる映画を監督した二人もいる。映画『ゴーストバスターズ』『6デイズ/7ナイツ』といったエンターテインメント作品を手掛けたアイヴァン・ライトマンと、映画『JUNO/ジュノ』『マイレージ、マイライフ』といった日常的なものや現代社会をテーマにした作品を手掛けたジェイソン・ライトマンだ。しかし『JUNO/ジュノ』のヒロインが妊娠検査薬をおもちゃ感覚で試すシーンや、映画『ヤング≒アダルト』の主人公がプリンターのインクをツバで代用するシーンなど、シニカルながら「笑い」という点ではコメディー作品を多く手掛けたアイヴァン譲りの遺伝子が感じられる。
そしてこのたび『アンチヴァイラル』で長編映画デビューを飾るブランドン・クローネンバーグ。映画『ラビッド』『ザ・フライ』『ヴィデオドローム』『裸のランチ』といった強烈な作品を世に送り出してきた、カナダの鬼才デヴィッド・クローネンバーグの息子だ。本作は、セレブから採取された病気のウイルスが商品として取引される近未来を舞台に、主人公が陰謀に巻き込まれていくSFサスペンス。その斬新な設定も、鮮やかに血が飛び散る容赦ないショッキング描写も、“親子たる所以”といったものを感じさせられる。(山本優実)
映画『アンチヴァイラル』は全国公開中