美空ひばり、松本清張のリクエストで私生活でも熱唱…「生誕祭」で語られた秘話
昭和50年代にフジテレビで放送されていた音楽番組「ザ・スター」に未公開映像を加え再編集した映画『ザ・スター 美空ひばり ~大人の音楽祭~』の公開記念トークイベントが29日、日比谷公会堂で行われ、ひばりプロダクションの加藤和也社長と上原徹監督が登壇してひばりさんの思い出話に花を咲かせた。
毎年ひばりさんの誕生日に行われる「生誕祭」の一環である本トークイベント。生前のひばりさんのフィルムがスクリーンに映し出されると、会場に集まった約1,000人のファンが一斉に手拍子を始める中、加藤が登場。「気付いたら四半世紀。今も絶対に年を取らない美空ひばり。皆さんの変わらぬご声援、本当に感謝しております」とあいさつした。
番組放送時、各局に一人いたという「ひばり番」の担当だった上原監督は当時30代。「神様、美空ひばりとどう接すればいいかという緊張があった。でも、ひばりさんのほうは『おはよう』と本当に気さくな感じで和まされた。厳しい面もあったけれど基本は穏やかな人だった」と振り返った。
加藤によればひばりさんは生前、人付き合いを大切にする「心配りの人だった」といい、「常に人のためになれと言っていた。自宅で誰かをおもてなしするのも好きで、プライベートでもよく人前で歌を歌った。作家の松本清張さんから『ひばりさんの歌が聞きたいよ』とリクエストされ、その場で3コーラス歌い始めたこともある」と上原に同調するようにひばりさんの素顔についてさまざまなエピソードを明かした。
公開される映画『ザ・スター 美空ひばり ~大人の音楽祭~』は、「ザ・スター」の第1回ゲストとしてひばりさんが5週連続で出演し、数々のヒット曲や名曲を歌い上げた当時の模様を未公開映像も交えて再編集した作品。最先端デジタル技術で鮮やかによみがえったサウンドとビジュアル、同番組以外では披露されなかった未発表曲の公開などが見どころとなっている。
上原監督は「32年前の映像がよみがえって公開されるだけで感無量。番組5回分、32曲を当時収録した。その内29曲を放送したが、予算がなくて、収録自体は一日でやった。朝早くから夜中の12時までかかった」と撮影時を振り返り、それでもひばりさんは嫌な顔ひとつせず、撮り直しもほとんどなく、この仕事を乗り切ったと懐かしそうに語っていた。なお、この日は、ひばりさんと親しかったプロデューサーの石井ふく子も登場した。(取材・文:名鹿祥史)
映画『ザ・スター 美空ひばり ~大人の音楽祭~』は6月8日から24日まで新宿バルト9ほか全国公開