フランソワ・オゾン監督、監督も観客も「のぞき魔」だと持論を展開!新作は創作の裏側を見せる知的サスペンス
映画『8人の女たち』などで知られるフランスの鬼才フランソワ・オゾン監督が、最新作『危険なプロット』の日本公開を間近に控えてインタビューに応じ、自身の映画に通底する「のぞく」という感覚について語った。
『危険なプロット』は、ユーモラスながら毒気たっぷりのサスペンスドラマ。凡庸な生徒たちの作文の採点にへきえきしていた高校教師ジェルマン(ファブリス・ルキーニ)は、とある級友とその家族を皮肉たっぷりに描き出した才気あふれる生徒クロード(エルンスト・ウンハウアー)の文章に心奪われる。クロードは、ジェルマンからのマンツーマン指導により、その文才を開花。さらなる文章の深みを目指すために、クラスメートの家庭に深く入り込むようになるが……。
オゾン監督が「僕の作品は内容の違いはあれど、全てが自画像。今回はあえて、普段はなかなか見られない創作の裏側を観客とシェアしようと思った」と語る通り、物語をテーマとした本作からは「欲望に忠実に」というオゾン監督の信念が垣間見えるよう。中産階級の家族の秘密をのぞき見るようなクロードの作文が次々と提出され、その物語が「続く」と締めくくられるたびに、ジェルマンは後ろめたさを感じながらも「続きを読みたい!」という欲求をエスカレートさせていく。
そしてスクリーンの前の観客も、ジェルマン同様に下世話な欲求が満たされていく。「映画はのぞき見る芸術だと言ったのは、ヒッチコックだったと思うけど、監督というのはのぞき魔だし、観客だってのぞき魔だ。だからこそ映画というものが愛されてきたんだろうね」と持論を展開したオゾン監督は、「やはり人間というのは、現実よりもフィクションに惹(ひ)かれていく傾向はあるんだと思う。だからこそ物語の続きが気になるんじゃないかな。僕にもそういう面はあると思うしね」と笑いながら付け加えた。
すでに母国フランスでは次回作『Jeune & jolie(原題)』も公開されている。「これは17歳の女の子の話なんだ。本作が若い男子学生の物語だったから、次作も若いティーンエイジャーでいこうと思ってね。僕も最初の頃はティーンエイジャーを題材としてきたけど、『まぼろし』(2001)のあたりから大人を描くようになった。だから原点に戻るような感じだね。とはいっても、僕も大人になってきているから、その視点が加わった新しいものを見せられるはずだよ」と期待をあおった。(取材・文:壬生智裕)
映画『危険なプロット』は10月19日よりヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほかにて全国公開