『AKIRA』大友克洋、飲み屋での一言が同業者を刺激?競作オムニバスの裏側
『AKIRA』などで知られる映画監督・漫画家の大友克洋が22日、Apple Store Ginzaで行われた「Meet the Filmmaker」イベントに来場し、最新作『SHORT PEACE』制作の裏側について語った。この日はほかに、カトキハジメ、森田修平、安藤裕章も出席した。
本作は、「日本」をテーマにした短編アニメ作品を、気鋭のクリエーターたちが競作するオムニバス作品。大友が手掛けた『火要鎮』は、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞したほか、第85回アカデミー賞短編アニメ賞のノミネート候補作品に取り上げられるなど、本作公開前から注目を集めてきた。
本作に参加するのは、「ガンダム」のメカニカルデザインで知られるカトキハジメ(『武器よさらば』)、大友がキャラクター&メカニックデザインを担当した「FREEDOM」の森田修平(『九十九』)、『鉄コン筋クリート』の演出で知られる安藤裕章(『GAMBO』)たち。そんな彼らに大友は「皆さん独立してやられている方たちですから」と全幅の信頼を寄せている様子。
とはいえ、大友が何気なく放った一言が、この気鋭のクリエーターたちを刺激したようだ。安藤は「絵コンテでは再現できないような動き、編集を重視したような作り方ができないか」と大友から伝えられたと証言。それに対して大友は「軽いCGでキャラクターを3Dの立体で作り、それを動かしながらカメラワークを決めればいいんじゃないかと。そうすると実写に近い感じになるんですよ」とその意図を解説。結果、安藤は絵コンテを基にしても同じことはできるのではないかと考え、従来のアニメ制作のセオリーにのっとって制作したとのことだが、「短編はいろいろなチャレンジができるところが楽しい」と振り返った。
一方、カトキは「今どきのハリウッドのアクション映画ってカメラは動くし、すごいよな」と伝えられたという。カトキも「最近のハリウッド映画を絵コンテに起こそうとしても描けない。それはつまりそういうものをリクエストされたのかなと思った。これはチャレンジでしたね」と述懐。しかし、当の大友はアドバイスをしたという意識はなかったのか、「飲み屋の席に勝手に言っただけじゃないの。アドバイスなんて差し出がましいです」と返していた。(取材・文:壬生智裕)
映画『SHORT PEACE』は7月20日より全国公開